ボイルさんがアスペルガー症候群、それってなに?

イギリスのオーディション番組をきっかけにして、世界的なスターダムへとのしあがったスーザン・ボイルさん(52歳)が2014年12月8日、自身がアスペルガー症候群であることを告白したそうです。

ボイルさんによると、幼少期より発達障害の自覚症状があったため、スコットランドで専門医の診察を受けたところ、アスペルガー症候群だと診断されたといいます。診断名がついたことで、彼女自身は「問題が認識できたことで、少し気が楽になった」と話しているとのことです。

この報道を聞き、以前、ADHDについて取材した日のことを思いだしました。

アスペルガー症候群とはなにか

ADHDは、日本語でいうと「注意欠陥多動性障害」あるいは「注意欠如・多動障害」です。(1)なみはずれた不注意、(2)そわそわ&うろうろしてしまう多動性、(3)考える前に反射的に行動してしまう衝動性――これら3つの症状があるのが特徴です。

ボイルさんのアスペルガー症候群は、このADHDとの判別が困難とされ、臨床現場では両者をひとくくりにして、「発達障害」と呼ぶこともあります。

もっとも、アスペルガー症候群は自閉症の一種ですから、見え方や聞こえ方といった五感の働き、物事のとらえ方や考え方といった心の動きが多くの人とは異なっていて、世界の認知方法そのものに特質が見られることから、ADHDとは別物です。

取材時、ADHDの息子さんを抱えるお母さんから聞いた説明がとてもわかりやすかったので、ここで紹介しておくと、小学校時分にどのクラスにもひとりかふたりいた落ち着きのない子――あの子たちがADHDです。

普通に会話ができるし、いっしょに遊ぶこともできるので、特殊学級には在籍しないけれど、ちょっと情緒不安定ぎみな子、というイメージですね。3割くらいは、大人になるにつれ、ADHDの3つの特性が目立たなくなっていくそうです。『窓ぎわのトットちゃん』を書いた黒柳徹子さんはADHDとして知られています。

これに対し、アスペルガー症候群は、映画『レインマン』で、ダスティン・ホフマンが演じたお兄さん。

自閉症の一種ですから、他人とのコミュニケーション能力に大なり小なり障害を抱えています。ひらたくいえば、他人の気持ちを察することがうまくなくて、相手の内面をおもんぱかるということが苦手なのです。気遣いができませんから、人と衝突することが少なくない。それがつらいし、生きづらい、とは、アスペルガーの従兄弟の言葉です。

ただ、その生きづらさは、診断名をもらい、症状を自覚し、周囲の認知と理解を得ることによって、やわらぐことも少なくないといいます。

ボイルさんは「アスペルガー症候群であることをおおやけにしたのは、自分のことを理解してほしいから」と語ったそうです。

彼女もまた、生きづらさを抱えて、52年間を過ごしてきたのでしょうか。

今回のカミングアウトによって、彼女を取り巻く世界が、人々が、これまでより少しでも彼女と溶けあうといいのになあ――。

これまで彼女の歌声にはなんの感興ももよおしたことがありませんでしたが、彼女の半生を想像したとき、そんなふうに願う気持ちがなぜだかふっと湧きあがっていました。

トップ写真/イメージカット(photo credit: BdwayDiva1 via photopin cc

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