この夏休み、初めて山にテントを張って泊まる「テント泊登山」に挑戦! 遭難や自己を起こさないためにどうすればいいのでしょうか。安全に山登りを楽しむためには何が必要でしょうか。山へ行く前に図書館やインターネットで調べて準備しました。山登りの様子といっしょに紹介します。
もくじ
はじめに
初めて山に登ったのは小学1年のときでした。本当にしんどくて、汗をいっぱいかいて、つらかったのを覚えています。でも、そのあと筑波山とか陣馬山とかを日帰りで次々に登り、山のてっぺんから見る景色に感動したり、美味しいお弁当や茶店のアイスクリームやお団子を食べたりしているうちに山登りがだんだん嫌いではなくなってきました。
今年の夏休みには初めてテントに泊まる登山にチャレンジすることにしました。前からお父さんに誘われていたのですが、いままでは断っていたのです。
どうして行くことにしたかというと、自由研究何しようかと悩んでいたとき、お父さんに「安全に山に登る方法をまとめてみたら?」といわれたからです。
「登山の方法について自分で調べて準備して、そのあと本当に山に行く。そこで気づいたこと、失敗したこともまとめて紹介したら、ほかの人の役に立つかもしれないよ。最近は悲しい遭難事故も多いからね」とお父さんはいいました。それから「テントに泊まったほうがきっといいものになるね」と小さな声でつけくわえました。
わたしはちょっと前の小学生の男の子とお父さんの遭難事故を思いだしました。そのときにはやってみよう!という気になっていました。
いままでに登った山
【高尾山】全部のコースを歩きました。団子がとてもおいしい山です。
【陣馬山】猿がたくさんいて怖かったです。暗くなって道に迷いかけたのも怖かったです。
【筑波山】高尾山の5倍は疲れる山。山頂の景色は5倍よいです。
【鍋割山】山頂の山小屋の鍋焼きうどんがすご〜くおいしかったです。
家で旅支度をしよう!
①登山に必要なものって何?
荷物はできるだけ軽くするのが、山登りの基本です。荷物が重たいと普通に歩くだけで疲れてしまうからです。ケガもしやすくなります。テントもシュラフ(寝袋)も、料理の道具も登山用の軽いものを選びます。
ギターはいらない!
お父さんがギターを持っていくといいました。山でそんな大きなものをかついでいたら、ほかの人に迷惑がかかります。木に引っかかって危ないです。止めました。
熊鈴も必要!
クマがいる山に行くときはクマよけの鈴をリュックにぶらさげます。チリンチリンという音でクマが逃げてくれるのです。
②山登りの服装は?
夏山登山の服装です。夏といっても山の気温は町の気温よりずっと低いのです。高度が100メートルあがると、温度は0.6度さがります。山のふもとが30度だとすると、2000メートルの山では18度になります。3000メートルだと12度です。防寒対策が必要になります。山の天気は変わりやすいので、雨具も必要です。汗をたくさんかくので着替えもいります。
登っているときはとても暑いです。汗をすごくかきます。でも、立ちどまると汗が風で冷やされて寒くなります。体温が急にさがると低体温になることもあります。だから登山の服装は「重ね着」が基本です。汗が乾きやすい「化学繊維」の服がおすすめです。登山用の服はすべてナイロンやボリエステルでつくられています。
③山では何を食べる?
荷物を軽くするにはフリーズドライの食べ物がおすすめです。乾燥ご飯やレトルトカレーなどが山の食事として人気です。山の食事のことを、登山が好きな人たちは「ヤマメシ」と呼んでいます。
④どの山に登るか決める
今回は初めてテントに泊まります。日帰りのときより遠くの山に挑戦できそうです。夏の山は暑いのですが、高い山は涼しいので、標高の高い山にすることにしました。
東京の自宅から行きやすい山のなかで高い山を探すと、日本アルプスがよさそうだなと思いました。
調べてみると、日本アルプスは遭難、滑落(ガケを滑り落ちてしまうこと)の事故が多いことがわかりました。そこで、子どもでも安全に登れる山にするために。こんな条件を決めました。
◎日本アルプスを子どもが登るための条件
- 登山口から山頂までの標高差が小さい山
- 登山道に危険なところがない山
- 人気が高い山(迷うことが少なくなるから)
- 山小屋がいくつかある山(いざというときに逃げ込めるから)
- 登山予定日の天気がいい山(週間天気予報で確認)
交通の便、山小屋、お店の数などを考えると、初心者の人がいちばん安全なのは、北アルプスだそうです。次が中央アルプスで最後が南アルプス。でも、今回は山を登る時間がいちばん短い中央アルプスの木曽駒ヶ岳に決めました。重たいリュックを背負って山を登るのは、想像しているよりずっと大変だとお父さんに聞いたからです。それに、ロープウェイにも乗ってみたい! ロープウェイからの景色がいまから楽しみです。
⑤計画書を書く
登る山が決まったら、家でかならず計画を立てるようにします。登山ではこんな事故がよく起きています。
- 道に迷う
- 滑落して遭難する(ガケから滑り落ちて、ケガをして動けなくなる)
- 低体温症(寒さで体温がさがって、体が動かなくなる。死亡事故も多い)
山では携帯電話が使えない場所が多いので、何かあっても助けを呼ぶことが難しいのです。最近はとくに、遭難事故が増えているそうです。毎年3000人くらいの登山者が遭難しています。そのうち1000人くらいがケガをして、300人以上がなくなっています。計画書を提出していたのは、10人に2人くらいしかいないそうです。
私たち人間は、自然の大きい力には勝てません。しっかり準備していても、何が起きるかわからないのです。華族やまわりの人に迷惑をかけたり悲しませたりしないために、できるかぎり準備していく必要があると思います。
⑥リュックに荷物を詰める
いよいよ出発です。リュックサック(ザック)に荷物を入れます。荷物の詰め方にはコツがあります。下手くそな入れ方をするとバランスが悪くなって、転びやすくなるし疲れやすくなります。背中の方に重たいものを入れるのが基本です。
今回の荷物はなんと二人分で20キロ以上!
今回の荷物をわたしとお父さんのリュックに分けて入れました。赤いのがお父さんのリュックです。体重計に乗せてみたら、15キロありました! 白いのがわたしです。5.5キロありました。これを背負って坂道を登るのはかなり大変そう。
山に登ろう!
木曽駒ヶ岳ってどんな山?
日本百名山のひとつです。中央アルプスでいちばん高い山です。
ロープウェイを降りると、「千畳敷カール」という、とても有名な場所があります。
高度2500メートルの高山帯には、普通の山のように森林がありません。高山植物が緑の絨毯のようにどこまでも広がっています。
のびのびした風景を楽しむために、登山客だけでなく観光客もたくさん来ていて写真を撮っていました。
わたしが行ったのは夏休みでしたが、夏の初めには色とりどりのお花が咲き乱れるそうです。
高山帯はハイマツ帯とも呼ばれていて、生えている木はハイマツだけです。松の仲間ですが、腰ぐらいの高さしかありません。
木曽駒ヶ岳の「本岳」は標高2956メートル。「中岳」「宝剣岳」も木曽駒ヶ岳の一部です。
この日の東京の気温は36度でした。千畳敷カールは16度。長袖と長ズボンでも寒いくらいでした。
高山帯って何?
標高2500メートル以上は「森林限界」といって、森林が育つことができません。ハイマツに覆われていたり、草原や岩場があったりします。
これまで登った高尾山や筑波山は山地帯で、ブナやミズナラの林がありました。亜高山帯にはシラビソやコメツガが多いとお父さんに聞きましたが、どんな木だかわかりません。
カールって何?
2万年前、氷河期の氷が削りとったお椀型の地形です。「千畳敷カール」は、「濃ヶ池カール」などとならんで日本を代表する中央アルプスのカールです。
今回の登山ルートは?
まずはカールを登ります。それから2つの山荘(宝剣山荘と天狗荘)を通り過ぎ、中岳(高度2925メートル)を越えてテント場へ。
テントを張ったら、駒ケ岳の頂上へ向かいます。そのあとテント場で料理をして食べます。
夜は早めに寝て、次の朝は山頂で朝日を見る予定です。
木曽駒ヶ岳テント泊登山記録
1日目
この日は朝2時に起きました。そんなに早く起きたのは生まれて初めてのことでした。
お父さんが「車で寝ててもいいよ」といってくれましたが、高速道路を走っているあいだ、わたしは喋りっぱなしでした。やっぱり興奮していたのだと思います。
山には何度も登ったことがありますが、なんといっても今回は初めてが3つあります。
- 日本アルプスに行くこと
- 3千メートルの山に登ること
- 山の上のテント場に泊まること
この3つです。
ちょっと不安だけれど、楽しみです。
1.長野県までクルマで行き、そこからバスに乗り換えて、ロープウエイの「しらび平」駅へ。
2._ロープウェイで標高2600メートルまで行きます。標高950メートルは日本一だそうです。
3.登山口の登山ポストに計画書を投函。高度に体をならすため、1時間休憩しました。
4.登山口にある神社で、山の神さまにきょうとあすの安全をお願いしました。
5.さあ、千畳敷カールに登ります。寒かったのに、すぐに汗が出てきました。
6.行動食を食べながら登りきりました。2時間かかったけれど、すごくきれいな景色。
7.ロープウェイの駅があんなに遠くに見えます。町ははるか彼方。その向こうは南アルプスです。
お昼休憩。赤い屋根と建物は天狗荘です。その先に、今から登る中岳が見えます。
9.中岳に向かって歩きだします。青い屋根の建物は宝剣山荘です。
10.だいぶ登ってきました。いつのまにか天狗荘と宝剣山荘が人形のお家のように小さくなっていました。
午後、中岳をおりて、テント場へ
11.中岳の頂上につきました。もうヘトヘトです。お父さんは元気で、岩のてっぺんに登っていました。
12.中岳から反対側の斜面をくだっていきます。今夜お世話になる山小屋のテント場が見えます。
13.なかなか山小屋までたどり着けません。大人の人たちにどんどん抜かされていきます。
14.急な岩場を急がずあわてずゆっくりと下りていきます。浮き石(踏むとグラグラする石)がたくさんあって、すごく怖かったです。
15.テント場に到着。お父さんがテントを張りました。今夜の別荘の完成です。
16.ほかにもたくさんのテントが張られていました。数えたら、全部で22もありました。
17.お父さんは山小屋でビールを買って飲んでいました。わたしは暇なので、読書タイムにしました。
夕方、駒ケ岳に登り、晩ごはん
18.駒ケ岳山頂までゆるやかな坂道が続いています。
19.山頂に着きました。天気がどんどん悪くなってきて、ガスに覆われてしまいました。残念。
20.晩ごはんをつくっていたら、夕立が降りだしてきたので、テントのなかで注意しながら料理しました。今夜は、ラーメンとジンギスカンです。
21.気がつくと真っ暗になっていました。東京とちがい、足元も見えません。
23.いつの間にか寝てしまっていました。おやすみなさい!
2日目
夜のあいだ、風が台風のときのようなビュウビュウという音を立てていました。途中、月や星も出たそうですが、やがて雨が降りだしたみたいです。
お父さんは「テントが飛ばされそうで気になってあまり眠れなかった」といっていました。わたしはぐっすりでした。
朝起きると、テント場は深い霧に包まれていました。雨も降っていて、あたり一面真っ白です。
テントの床もちょっと濡れていました。怖くなって山小屋に泊まりたいと思ったのですが、山小屋のお姉さんが励ましたくれました。それで元気が出て、なんとか下山することができました。
24.朝食はごはん、具だくさんのお味噌汁。わたしも手伝いました。風と雨が強いので、テントのなかで食べました。
25.牛乳みたいな霧のなか、宝剣山荘に到着。大きな建物なのに、近くに行くまで気づきませんでした。
26.ロープウェイにやっと到着。雨具を着ていても濡れました。着替えを持ってきていてよかった。今日はカールも見えません。
まとめ
2日目の朝はどうなることかと思いました。下山のときも昨日ははっきり見えていた道が全然見えなくて、遭難するんじゃないかと心配でした。無事に家に帰ることができて、心の底からほっとしました。
1日目も2日目も天気予報では晴れのはずだったのに⋯⋯。山の天気が変わりやすいというのは、ほんとなのだなあと思いました。十分な準備をしていても、山の上では何が起こるかわからない。ケガをしなくてほんとうによかった。いい経験ができたね」といっていました。だから、きちんと準備して、登る山のことを調べて、計画書を書いて出すことが大切なのだと感じました。
楽しい登山でした。次はアルプスのほかの山にも登ってみたいです。
【残念だった点】
- 木曽駒ヶ岳のてっぺんからの景色が霧で見えなかったこと。
- きれいな星空も朝日も見られなかったこと。
- 高山のめずらしい動物(ライチョウやカモシカ)に会えなかったこと。
- 靴までびしょ濡れになったこと。
【よかった点】
- 1日目はすごくいい天気だったこと。
- 珍しい雲や、高山の野鳥に会えたこと。
- これまでよく登っていた高尾山(599メートル)、筑波山(877メートル)よりずっと高い山にちゃんと登って下りてくることができたこと。
不思議なできごと!
高山の野鳥のカヤクグリとイワヒバリにも会いました。イワヒバリはカールの急な坂道で、雨と風が強くなってきて、怖くて足がすくんでしまったときにやってきて、ロープウェイまで私たちの先をちょんちょん歩いて道案内をしてくれたのです。
帰りに温泉によりました! 冷えた体が温まりました。
おしまい
ランキングからきました。
お子様と登山、いいですね(^^♪
素敵な記事をありがとうございました。
こちらこそコメントどうもありがとうございます。いまごろ気づきましたもので、お返事が遅くなりました(^_^;)