目的地 | 尾瀬ヶ原、見晴キャンプ場 | |
エリア | 尾瀬国立公園(福島県、群馬県、新潟県) | |
登山レベル | 初級★★ | |
標高 | 約1400m(尾瀬ヶ原)、1420m(見晴) | |
登山口標高 | 1594m(鳩待峠) | |
総歩行距離 | 19km | |
総歩行時間 | 6時間45分 | |
山行日 | 2019.6.3-4 |
尾瀬の概要はこちら。
尾瀬早わかり! 尾瀬に初めて行く人が読む記事もくじ
ミズバショウ咲き誇る尾瀬ヶ原を1泊2日で満喫!
6月初旬の平日、娘を連れてミズバショウ咲き乱れる尾瀬ヶ原を散策。見晴のテント場(見晴キャンプ場)で1泊して、帰路につきました。
その一部始終をお伝えします。
尾瀬でテント泊をしてみようと思っている方の参考になればうれしいです。
山行計画(鳩待峠~尾瀬ヶ原~見晴キャンプ場)
今回の予定コースはこんな感じ。
- 1日目、鳩待峠から山の鼻へ。
- 尾瀬ヶ原の湿地に咲く美しい花々を撮影しつつ、見晴へ向かう。
- 道中、湿原なめの至仏山というロケーションにて、年賀状用の写真を撮影予定。
- 見晴のキャンプ場(テント場)で幕営。
- 時間があまれば、三条ノ滝を見に行く。
- 2日目は東電小屋に寄り道し、鳩待峠へ戻る。
では、はじまりはじまり~。
戸倉~鳩待峠(乗り合いタクシー)
東京を朝4時半ごろ出発。途中、娘のリクエストにお応えし、コンビニやらサービスエリアに寄っていたので、戸倉第一駐車場への到着は9時となりました。
高速をぶっ通しで走れば、東京から3時間かかりません。
シャトルバスのチケット売り場にて、往復券を購入。大人980円、子ども490円なり。
シャトルバスの運行間隔は、1時間に1本以下。でもそのあいだを埋めるように、乗り合いタクシー(マイクロバス)が次々発車します。
僕らが着いたのは、シャトルバスの出発間際だったのですが、娘のウンチ待ちで、逃してしまいました。
というわけで、乗り合いタクシーに乗車。チケットは共通です。
30分ほどで鳩待峠の駐車場に到着。マイカー規制が敷かれているため、自家用車はありません。
駐車場からちょっと歩きます。3分くらいかしら。
鳩待峠休憩所。帰りのシャトルバスのチケットはここの売店で購入します。
売店では、尾瀬名物の花豆ソフトクリームやかき氷を販売。食道と土産物屋もあり、お蕎麦や舞茸飯といった料理が味わえます。
土産は白あんの饅頭が人気。山小屋(鳩待山荘)が奥にあります。入浴もできます。
鳩待峠~山の鼻(60分)
鳩待峠休憩所の先に登山口があります。ここから1時間くらい下って尾瀬ヶ原へ入ります。ポケットサイズの折りたたみ地図が置いてあるので、ゲットしました。
最初の300mは石畳の階段がつづきます。そのあと木の階段。濡れているとかなり滑りやすい。この日はからからに乾いていました。
平日とはいえ、ミズバショウ最盛期。何組ものツアー団体が訪れていて、2列の狭い木道にずらり列をなしていました。ツアーのお客さんは、ガイドさんの説明を聞きながら歩きます。立ちどまります。まさに牛歩の歩み。写真も撮りにくい。追い越すことに。
からだの小さい娘は隙間を縫うようにしてヒョイヒョイとくだっていきます。が、僕のザックはデカいので、人にぶつからないようついていくのは大変。
追い抜いた人の数は、100人をくだらないことでしょう。ほぼ平坦なところまで下りてきました。テンマ沢(たぶん)を渡っています。鳥のさえずりが聞こえます。オオルリかな。姿は見えません。
そして、ミズバショウとご対面! 群生しとりますネ。このあたりは尾瀬でもっとも早く見ごろを迎える群生地。可憐です。その白い部分に僕も包まれたい。
写真を撮るために超高速で下りてきたというのに、撮影していても娘はちっとも待ってくれません。
ここまでずっと僕らの左手を流れていた川上川ですが、山の鼻のすこし手前で流れる方向を変えます。尾瀬ヶ原へ注ぎこんでいくのです。こんなふうに何本もの沢が流れこんで、広大な湿地帯が形成されているのです。
ビジターセンターが見えてきました。山の鼻に到着です。
山の鼻(小休憩)
ベンチがたくさんあって、多くのハイカーが休憩しています。おやつを食べたり、花豆ソフトクリームを頬張っている人もいます。まだおなかも減っていないので、周囲を散歩しました。
奥の立て看板の脇から奥へ、木道が延びていますよね。あれは「研究見本園」の入り口。あそこにも湿原があります。
1周30分の木道が整備されていて、ミズバショウの大群生が楽しめます。メインルートから外れるため、かなり空いている模様。
新しめの看板のまえで、個人ガイドとおぼしきご年配の男性が、2人のお客さんに尾瀬についてレクチャー中。聞き耳を立てると、地層とか水源涵養の話。『ブラタモリ』みたいで、興味を引かれましたが、娘にザックをつかまれ、その場から引きはがされます。
山の鼻にはテント場もあります。尾瀬ヶ原へ抜けるルートの脇ですので、朝は人の往来が激しくて、落ち着かないかも。
でも地面はまっ平ら。水場もちゃんと整備されている。きれいなトイレがすぐそばにあって、山小屋の食堂も利用可能。至便ですネ。
ちなみに山の鼻にはビジターセンターのほか、3つの小屋があります。
そろそろ尾瀬ヶ原へと歩を進めることにします。
至仏山の登山道は現在、閉鎖中。残雪期の植生保護のためだとか。
山開きは7月1日。ん? もう来週か(これ書いてるのは6月28日)。行こうかな。
山の鼻~牛首分岐~龍宮十字路(45分+40分)
山の鼻をあとにして、歩きだします。
木道はつづくよ、ど~こまでも~♪ というフレーズを思いつきましたが、笑いのセンスを疑われるので、口にはしませんでした。
前方には燧ヶ岳が見えます。きょうの宿泊地は、あの麓にある見晴のキャンプ場。先は長い。
振り返ると、至仏山がドーン。迫力満点!
さきほど渡ったヨッピ川(川上川)をもう一回、渡ります。れっきとした一級河川です。それにしても水がきれい。
川底から生えるミズバショウ。水の流れにただ身をゆだね、ゆらゆらと揺れています。
暑いというほどではありませんが、涼しくもないので、飛びこみたくなりました。
でも川面を渡ってくる風がとても気持ちいい。はあー、最高の気分。
ミズバショウのアップ。
白い部分(苞、ほう)は葉が変形したもので、冷気から果穂(黄色い部分)を守っているそうです。水の流れからも、でしょうね。上流側から覆いかぶさっていますので。
果穂には種が無数に入っています。まさにゆりかご。
ちなみにミズバショウの葉は、生長すると1メートル以上になることもあるとか。
湿原いたるところにある池塘(ちとう、湿原にできる池沼のこと)からは、ゲコゲコゲコゲコとカエルの大合唱が聞こえてきます。田んぼだけらけの田舎にやってきたかのようであります。
それにしても最高のハイキング日和です。燧ヶ岳のあたりには雲が出ているようですが、僕は晴れ男。天気の心配は無用。
と思っていたら、前方にどんどん雲が湧いてきました。
写真はリュウキンカ。ミズバショウといっしょに咲いて、湿原を華やかに彩ります。
龍宮十字路に到着です。左へ行けばヨッピ吊橋、右へ行けば富士見峠、直進すれば見晴へ。前方にあるのは、龍宮小屋です。
ヨッピ吊り橋をまわって、牛首分岐へ戻るのが、尾瀬ヶ原を日帰りする場合のもっともポピュラーなコース。僕らはあすヨッピ吊橋を渡る予定ですので、きょうはスルー。
それにしても、山のなかでなんで龍宮? という疑問が湧いたので、ちょっと調べてみました。
ヒマワリ先生
どゆこと?
龍宮十字路~見晴(30分)
龍宮小屋には売店や食道があります。もちろん宿泊も可能。
日帰りハイキングの折り返し地点ですので、ここでお弁当を広げている方が多い。横目に見ると、みんな同じおかず。お弁当つきツアーでしょうね。
左の奥へと道はつづきます。水洗トイレもあります。尾瀬のトイレは1回100円です。
トイレに寄ってから、また歩きだします。ひさしぶりのテン泊なので、ザックが肩に食いこんで痛い。20kgです。
こうして見ると、娘のザックもデカい。
ただ、荷物はダウンジャケットやシュラフ、フリースなどが中心。見た目ほど重くはないです。
県境をまたぎました。群馬県から福島県へ入ります。
燧ヶ岳(2356m)が、かなり近づいてきました。あと1kmくらいですネ。
尾瀬ヶ原は東西6km、南北4kmの本州最大の高層湿原です。龍宮小屋の前の看板にそう書いてありました。ということは、残り6分の1くらいか。
ここまでくるとガラッガラです。もう人っ子ひとりいない。あれだけ騒々しかったカエルの声もしない。太陽も隠れてしまいました。
静かだ……。
ふいに娘が「わ!」と叫び声をあげました。なにごとかと聞くと、
娘
ヒマなので、歩きながら娘が見たというその生き物の特徴をじっくり聞いてみると、どうやらトカゲのようです。ところが、娘は絶対にトカゲではないと言い張ります。
娘
ヒマワリ
そこまで話して、ハッとしました。
尾瀬にサンショウウオが棲息していることを思いだしたからです。
ひょっとしたらゲコゲコ鳴いていたのもカエルじゃなくってサンショウウオかもしれないぞ。めずらしいもん見たなー。ほんと? 正直、俺も見たかった。うれしー。わたしにだけ姿を見せてくれたんだね。パパ見てないんでしょ? 見たことないでしょ? いや、俺はオオサンショウウオ見たことあるから。なにそれ? (両手を肩幅くらいに広げて)こんなデカいんだよ。きもちわる~い!
とかなんとか、だらだら話しているうち、気がつけば山小屋の建ちならぶ見晴がすぐそこまで迫っていました。
見晴
見晴に到着。こじんまりとした集落といった趣です。
出迎えてくれるのは、弥四郎小屋。尾瀬ヶ原を望むように建っています。ロケーションがいちばんいい小屋です。
写真の左右には、ベンチがあります。
こーんな感じ。ハイカーがのんびりと談笑しています。
ここで、見晴の各小屋の位置関係をイラストマップでご紹介しておきます。
尾瀬見晴マップ~山小屋とキャンプ場の位置関係がわかる地図
この先この地図を頭に入れて読んでいただくことで、見晴の雰囲気がよりビビッドに伝わると思います。
では、つづきをどうぞー。
弥四郎小屋の手前を右手に折れて、とりあえずテント場へ向かいます。雪の塊が残っていますネ。
キャンプ場というか、テント場を管理(環境省からの委託)している燧(ひうち)小屋が左手に見えます。パラボラアンテナが3つも設置されていますネ。
玄関は東側(燧ヶ岳側)、つまり反対側ですので、ぐるっとまわっていきましょう。
クマザサの道を行きます。黒い建屋は公衆トイレ。
燧(ひうち)小屋の玄関に着きました。
なかに入り「キャンプ1泊、ふたりです。よろしくお願いします」と伝え、2人分1600円を支払いました。テントにつける札をもらいます。
見晴キャンプ場(テント場)
今夜のお宿(テント場)に到着!
腕時計を見ると13時40分。平日ということもあって、まだ3張りのみ。まんなかに立つ一本杉の奥に陣どることにしました。
サクッとテントを張って、テントから撮影したのがこちら。100張りいけるとのことですが、100張りだとぎっちぎちでしようネ。
幕営もすんだし、遅めの昼飯です。
どん兵衛とカップヌードル、ヤマメシのデファクト。山行のあとに食うと、ほんとうまい。おにぎりといっしょにいただきました。
おなかがふくれたので、腹ごなしをかねて見晴を散策することにします。
高さ100m、幅30mの大瀑布「三条ノ滝」へ行くつもりでしたが、娘ちゃんが乗り気でないので、あきらめました。
テン場の入り口にある見晴休憩所(ビジターセンター)。洗い場が併設されています。ここの水がこれまたうまい! 地下水かしら。
内部はこんな感じ。奥にリクライニングチェアが2脚あり、尾瀬と山に関係する本や雑誌が置いてあります。『PEAKS』(エイ出版社)が多かったです。
見晴休憩所の向かいには公衆トイレがあります。水洗。とてもきれい。
第二長蔵小屋。おみやげ屋さんを併設しています。オリジナルの手ぬぐいやTシャツなどもあります。
その隣には、原の小屋が運営する無料休憩所があります。
食堂、カフェがあるのですが、「CLOSE」の看板がかかっている。いまは営業時間外なのでしょうか。
無料休憩所に隣接している檜枝岐(ひうちまた)小屋です。喫茶があり、軽食もいただけます。
だれもいませんが、カウンターで呼び鈴を鳴らすと、お兄さんが階段をドドドッと駆けおりてきてくれます。
娘がホットチョコを頼みます。ホットチョコができるまで、お兄さんは娘にいろいろと話しかけてくれていました。
メニューはこんな感じ。僕はビールを頼みました。
玄関の柱にかかっているは温度計を見ると、ちょうど20度。わりと暖かい。この日の東京の気温とそれほど変わらないですね。
でも雪は溶けきっていないですネ。写真中央にかすんで見えるのが至仏山です。
檜枝岐小屋の向かいの尾瀬小屋。
尾瀬小屋には無料休憩場があり、売店を併設しています。ヱビスビールも飲めます。
ぐるりと一周して、弥四郎小屋に戻ってきました。
弥四郎小屋にはしゃれたカフェがあります。
尾瀬ヶ原と正対する格好で建っている弥四郎小屋、その別アングル。
小屋の右側の建屋は、弥四郎小屋の別館。本館と別館のあいだの道を抜けて、さきほどテント場へ向かいました。
尾瀬ヶ原の向こうには残雪の至仏山。
テント場へ戻ってきました。さっきよりテントが増えています。
娘ちゃん、いそいそとテントに潜りこむと、お昼寝をはじめました。
でも、もう6時前。夕食の時間です。
コンロやクッカー、食料をアタックザックに放りこんで、弥四郎小屋の前のベンチへ向かうことにします。
弥四郎小屋へとまたまた戻ってまいりました。
尾瀬ヶ原の夕景。
今夜のメニューはカレー。淡路産タマネギたっぷりのカレーなど、ちょっと高級なレトルトを2種類買ってきました。
「お味はどう?」と聞くと、娘は「まる~!」と答えます。あっという間にたいらげて、僕のぶんも半分くらい食べました。
テントに戻ったら8時半過ぎ。スマホで音楽をかけながら、寝袋に潜りこみました。
娘がこっちを見ています。なんどすえ?
娘
いまその話!? すっかり忘れていました。けれども、なんだかシャクにさわる。
ヒマワリ
さて、明日の朝は早起きして、朝もやに包まれる幻想的な尾瀬ヶ原とやらをバッチリ写真に収めるぞ。
おやすみなさい、娘ちゃん、そして尾瀬。。。
見晴(2日目)
朝を迎えました。
娘はいつものようにぐっすりでしたが、僕はほとんど眠れませんでした。なにしろ夜通し、「ピイイッ」「ピイイッ」とシカの鳴く声が湿原に響きわたっていて、うるさくてうるさくって。
発情してましたネ、完全に。春だから。
寝ついたのは4時過ぎでした。
が、その数十分後、急に冷え込んできて、娘が「寒い……」と言って起きてきました。ザックからダウンを引っ張りだして着せ、僕も着ました。その後ようやく眠りについたと思ったら、すぐ日が昇り、今度は暑くて寝ていられなくなりました。
そんな次第で、朝の尾瀬は撮影できませんでした。残念。
ちなみに尾瀬ヶ原のシカは増えつづけているそうです。わなや鉄砲で捕獲しているものの、植生被害は深刻で、食い荒らされて裸地化しているところもあるとか。
朝飯はミューズリーのお粥。ささっと食べて、テントを撤収し、出発です。
本日は快晴なり。曇天だった昨日とは、同じ景色もちがって見えます。
じつにすがすがしい。
第二長蔵小屋の売店に立ち寄りました。
檜枝岐小屋の朝。
弥四郎小屋。ハイカーたちが出発の準備を整えています。
さて、僕らも見晴をあとに東電小屋に向かって、レッツゴー!
見晴~東電分岐~東電小屋(60分)
木道はつづくよ、ど~こまでも~♪ 頭のなかで口ずさみます。口には出しません。笑いのセンスを……(以下、略)。
どこにいても、関西人としての矜恃は守り抜きます。
ミズバショウが咲き乱れています。小学生のころ、音楽の授業でみんなで合唱した「夏の思い出」が脳裏にこだまします。
「夏の思い出」を知らない方も知っている方も、よろしければこちらを流しながら、つづきをお読みください。
ミズバショウのアップ。ハイカーはみな、くるったようにシャッターを切っています。
僕もそのひとり。
木道のあいだにもミズバショウ。
至仏山とミズバショウ。
しゃがんでミズバショウの花をかいでみると、かすかに甘い香りがしました。
東電尾瀬橋にさしかかりました。
東電尾瀬橋の上から。ドドーッと迫力のある水音が聞こえます。
橋を渡ると、新潟県。県境を越えます。
木道沿いに咲くリュウキンカ。
東電小屋に着きました。
ホットコーヒー400円、アイスクリーム500円、たいやき300円、カレーライス800円。「気分で営業中です!!」とのこと。なんじゃ、そら!
東電小屋のはす向かいにある別館。無料休憩所を兼ねています。
東電小屋別館の軒下に、ツバメが巣をかけています。
巣の資材となる泥をついばんでいます。
あ、ツバメと書きましたけれど、尾瀬のツバメは「ツバメ」でなく、「イワツバメ」という種です。
イワツバメはツバメより小さく、ずんぐりしていて、腰の部分が白いのが特徴。ビジターセンターの軒下などにつぼ型の巣をたくさんつくり、そこで卵を産み、子育てをして、秋口になると東南アジアやフィリピンに渡っていくのです。
東電小屋~ヨッピ吊橋(60分)
東電小屋を出発し、ヨッピ吊橋をめざします。
ヘリコプターが飛んでいきます。見晴の山小屋へ食料を運ぶためです。
ヨッピ吊橋に到着。尾瀬で唯一の吊り橋だそうです。
ヨッピ吊橋~牛首分岐(45分)
ヨッピ吊橋のたもとでちょいと休憩してから、歩きだします。
足下になにやらニョロッとしたものが這いでてきました。
見ると、トカゲの子。「やっぱり昨日見たのはトカゲじゃない。こんなかたちじゃなかったからね」と娘。
サンショウウオ、僕も見たいッス。
このあたりは一帯に大小の池沼(ちしょう)がたくさんあります。
ゲコゲコゲコとカエルが大合唱しています。これはほんとうにカエルなのだろうか。サンショウウオではなかろうか。
その刹那、答えが見つかります。
サンショウウオの共食い。はじめて見ました。衝撃的ですネ(ウソ)。
池沼のいたるところにいます。どうして昨日はまったく目にしなかったのか。
腹部には鮮やかなオレンジ色のストライプ。イモリと同じで、泳いでいるときに下から魚に襲われないよう、毒々しい色でもって、「ワイのこと食うたら、おなか壊しまっせ!」とアピールしているわけですネ。
ヒマワリ先生
植生保護と景観維持のため、シカ柵を設置しておられます。
ご苦労さまです!
東電下の大堀橋(とうでんしものおおほりはし)。
ヨッピ吊橋から牛首へ向かう木道は、すれちがう人もほとんどありません。
でも向こうからだれかがこちらへ向かってきます。
歩荷のお兄ちゃんでした。
「こんちは~!」と声をかけても返事はありません。重たい荷物を黙々と運んでいます。きっと、返事どころではないのでしょうネ。
心のなかでそっとつぶやきます。ご苦労さま。
牛首分岐に着きました。あいかわらず、ゲコゲコゲコという合唱が湿原に響きわたっています。
木道を往く人、休憩している人、みな口々に「カエルかしら」なんて言っています。
じっくり観察すると、このあたりにもサンショウウオの姿が見つかるのですが、昨日の僕らと同様に気づく人はいない。
そこで、「パパ、そこにもサンショウウオがいるよ。もう30匹は見つけたね!」「サンショウウオだらけだね。ゲロゲロ鳴いてるのはカエルじゃなくて、サンショウウオだったんだなあ!」と大声で話しながら歩くことにしました。
するとみんな池沼をのぞきこんでは、サンショウウオの姿を探しはじめるのでした。
牛首分岐~山の鼻(45分)
左手に燧ヶ岳。あそこから2時間ちょっとでここまで帰ってきたわけです。
至仏山へ向かって歩きだします。
歩荷のお兄ちゃんたち数人とすれちがいました。
至仏山が大きくなってきます。
燧ヶ岳が池沼に写っています。「逆さ富士」ならぬ「逆さ燧(ひうち)」。
マイナスイオンを胸いっぱい吸いこみながら、ヨッピ川を渡っていきます。
水面に日光がきらきら反射して、ただでさえ美しいミズバショウがいっそう輝いてみえます。
山の鼻へぶじ戻ってきました。
どこからか「ヒンカララララー」と、馬のいななきのような鳴き声が聞こえてきます。コマドリでしょう。
山の鼻
至仏山荘の玄関。昨日は気づきませんでしたが、「熊多発!」の張り紙が!
昨日食べなかった花豆ソフトクリーム、きょうはいただきます。
小豆アイスのような味わい。美味~。
アイスクリームを食べ終わると、娘がトイレへ行きました。ところがなかなか戻ってこない。15分くらい待たされましたかね。
なにしてたの? 混んでたの? と聞くと、「いいから、ちょっとこっち来て」と手を引かれ、食堂の外へとひっぱりだされました。
イワツバメと遊んでいたそうです。
娘ちゃん
娘の言うとおりでした。1匹のイワツバメはなんと、娘のほうを見あげてさえずっています。
ほほう、人を怖がらないんだなと思って、僕が近づこうとしたら、一斉にバッと飛び去っていきました。
娘をサーカス団に売ることを決心しました。
山の鼻~鳩待峠(60分)
ブナやミズナラ、ダケカンバ、シラカバなどが茂る原生林のなか、鳩待峠に向かいます。
今回の旅ももうすぐおしまい。なんとなく名残惜しいですネ。
娘の足どりもしっかりしています。
1年前、千畳敷カールの登山道で、疲れた~、怖い~と、泣きべそをかいていたのがウソのようです。
成長したなあ、と娘の後ろ姿を眺めながら、父はひとりごちるのでした。
川上川。きょうの尾瀬も、たくさんの人が入山してきます。
川上川越しに至仏山が見えます。7月に入ったら、ぜひ登りたい。
ミズバショウも見納めですネ。
ホーホケキョ、ホーホケキョと、ウグイスの歌が聞こえています。
真上から聞こえてくるので、見あげるとウグイスの姿。
最後にあらわれるこの階段がきついのなんの。
娘に引き離されます。僕、もう汗だく!
とはいえ、行きと同じコースタイムの60分で、鳩待峠まで戻ってきました。
乗り合いタクシーがずらり。あそこに、尾瀬の石原裕次郎がいます。
シャトルバスかツアーバスでやってきたハイカーが、続々と入山していきます。
戸倉野駐車場へ戻ってまいりました。
尾瀬のトレッキングの旅はこれにておしまいで~す。
追記:お詫びと訂正
記事内でサンショウウオと書いている生き物ですが、あれはイモリです。
じつは後日、僕が参加しているFacebook登山グループのメンバーの方から、「写真に写っているのはアカハライモリではないか」というご指摘をいただいたのです。
で、尾瀬保護財団のページなんかを見てみたら、「お腹が赤いかどうかでイモリとサンショウウオが見分けられる」とありました。
完全にサンショウウオだと決めつけてましたネ。汗顔の至りです。子どものころ、イモリなんてたくさん見ていたのですが、思いこみってほんと怖い……。
ちなみにイモリには毒があります。そんでもって鳴きません。湿原中に響きわたっていたゲコゲコという声はやっぱりカエルだったのだと思います。
ヒマワリ
鳩待峠~尾瀬ヶ原~見晴しのコースタイム&コースマップ
【山行日】2019年6月3~4日
【歩行時間】1日目:3時間40分、2日目:4時間30分
【歩行距離】18.18km
【標高】最高1599m、最低1398m
【累積標高】上り198m、下り227m
【コースタイム】1日目:鳩待峠→(60分)→山の鼻→(45分)→牛首分岐(40分)→龍宮十字路→(30分)→見晴→(10分)→見晴キャンプ場/2日目:見晴→(25分)→東電分岐→(70分)→ヨッピ吊橋→(30分)→牛首分岐→(30分)→山の鼻→(60分)→鳩待峠
【主な装備】バックパック(僕65ℓ、娘30ℓ)、長そでTシャツ(乾きやすい化繊)、ウールの下着(夜間用)、水1ℓ/人、レインウェアとゲイター(雨とぬかるみ対策)、防寒着(フリース、ダウン)、トレッキングシューズ、トレッキングポール、帽子、手袋、タオルと手ぬぐい(汗ふき用)、地図、コンパス、ファーストエイドキット、ヘッドライト、食べきれないほどの食料
はじめまして。ああいうところで食べるカップラーメンやおにぎりは、やたらと美味しいですよね。
ですよね!
こんにちは、ひまわりではなくひだまりです。楽しい尾瀬道中を拝読しました。お嬢さん、タフそうで将来が楽しみですね
40年ちょっと前の大学時代の4年間、下田代十字路と尾瀬沼の小屋でアルバイトしてました。数年前に定年退職するまでは尾瀬どころではなく、定年退職した時から、ようやくぼちぼち歩き始めました。去年は久々の水芭蕉を堪能しましたが、膝靭帯を傷めているので、一番楽な鳩待~尾瀬ヶ原~尾瀬沼~三平峠~大清水の敬老コースを無理せず2泊です。
去年は5月と9月と歩きましたが、9月は尾瀬ヶ原から尾瀬沼を繋ぐ樹林帯の山道で鹿に出会いました……しかも時間差で2頭。尾瀬を歩いていると色々なことに出合います。詳しくはリンクからどうぞ。
7月6日から2泊で歩く予定でしたが、東京のコロナ感染者増加で都外への移動自粛と天候が芳しくないので来月以降に延期となりました。
またどうぞお出かけください。蛇足ですが、池沼でもいいのですが……なぜか尾瀬では、わざわざ“池塘”などと呼んでいたりします
こんにちは。コメントありがとうございました。
計画延期は残念ですね。こちらも今年はまだどこの山にも登っておらず、身体がなまってしまって、どうにもいけません。
娘のほうはさして残念なそぶりもなく、それが輪をかけて無念。。。