元旦、勝手知ったる神戸の山に登ってきました。
妻と娘を連れての帰省は毎度ヒマを持て余すものですから、今年は年末に計画を立てておいたのです。もちろんソロ登山。標高300メートル足らずの山ばかりですから、ソロハイキングといったほうがいいかな。
あ、勝手知ったるといいましたが、それは街のほうで、実家や神戸に住んでいた当時、山登りにはまるで興味がありませんでした。山を見ても登ろうとは一度も考えたことのない若者でした。
もくじ
須磨アルプスの登山コースをピストン
須磨アルプスは、六甲山全山縦走コースの一部です。
登山口は山陽電車の「須磨浦公園駅」の改札を出てすぐ。瀬戸内海の景色と山の風物がまとめて堪能できる、景勝のコースなのです。
アクセスも良好。山陽電車の「須磨浦公園駅」や駐車場からすぐとりつけますし、JR神戸線の「須磨駅」からでも少し歩けば登山コースに割り込めます。
僕は須磨浦公園の駐車場までクルマで行きました。
須磨アルプス登山コース、標準コースタイム
今日の登山コースはこんな感じ。
その先の東山を経由して下山口まで行き、町中を歩いて「板宿駅」から電車に乗って帰る、というのがポピュラーなのでしょうが、クルマでしたので馬の背で折り返しました。折り返したのにはもうひとつ理由があるのですが、それについてはのちほど⋯⋯。
以下は標準コースタイムです。『山と高原地図』のもの。ご参考までに。
- 須磨浦公園駅〜旗振山:35分
- 旗振山〜鉄拐山:20分
- 鉄拐山〜おらが茶屋:15分
- おらが茶屋〜栂尾山(つがおやま):35分
- 栂尾山〜馬の背:25分
- 【合計2時間10分/片道4.6km】
須磨浦公園駅から旗振山(32分)
駐車場に車を停めて、実は登山口がわからず、ちょっと迷いました。
駐車場の目の前は海。元旦の静かな瀬戸内海をカメラに収めております。
鉢伏山までは整備された階段を一気に260メートル登ります。
途中、登山客ではなく、日課の散歩をしているぞ、という感じの方数人とすれ違いました。近所の方でしょうか。挨拶を「おはようございます」にするか「おめでとうございます」にするかで迷いました。
「こんにちは」にしました。
平坦な道。元旦の凛とした大気が、すこし汗ばんできた肌に心地いい。
大きな岩に何か彫ってあります。
左は鉢伏山頂、正面は旗振山と鉄拐山、左は下山道、かな。
大和男子は正面突破。階段を踏みしめます。
気合十分でしたが、ものの3分で旗振山(253メートル)に到着。旗振茶屋は元旦から元気に営業中。
途中、鉢伏山の山頂(248メートル)も通過したはずですが、道標はあったかなかったか。鉢伏山頂は、須磨浦山上遊園があるあたりらしい。
旗振山から明石大橋を望む。
空を左に向けると、須磨海水浴場と須磨の浦、その先に海浜水族園。学生時代、あそこでよくデートしたなあ。人間はイルカを見ると、いつだって無条件にテンションがあがる。どうしてだろう。ユングは集合的無意識が関与していると指摘しています(ウソ)。
誰か死んだように寝ていました。大晦日に宴会でもやったのでしょう。もうお昼ですヨ〜。
旗振山から鉄拐山を経て、おらが茶屋(26分)
案内板にこれから向かう先が書かれています。
源平合戦で、源義経が絶壁から騎馬で駆けおり、平家本陣に奇襲攻撃をかけて圧勝したという、有名な逸話があります。いわゆる「一の谷の逆(さ)落(と)し」ですが、その現場がココ、鉄拐山と旗振山だそうです。
鉄拐山に到着。標高は234メートル。
旗振山より標高は低いですが、目の前がひらけていますので、パノラマ(広い眺望)が広がります。
第二神明の須磨料金所も見えます。神戸の会社に勤めていたころ、何度通過したことか。
あれから20年余。しかし昨日のことのように思いだす。フロイトは潜在意識がまれに記憶の時間軸を狂わせることがあると説明しています(ウソ)。
鉄拐山の北側の眺望。
また須磨海水浴場。夏は芋の子を洗うようですが、元旦は人っ子ひとりいませんネ。
この階段の上が鉄拐山頂です。下りてきました。
すこし行くとこんな公園が広がっています。第二神明の高倉山トンネルの真上です。
手入れの行き届いた展望広場ですネ。
こんな景色が楽しめます。明石大橋と神戸市垂水区の町並みです。
おらが茶屋に着きました。営業は土日祝日のみ。
- かきあげうどん(そば)500円
- 日替わり定食、唐揚げ定食各600円
- おらが茶屋名物茶粥500円。
- おらが茶屋カレー680円。
- そばめし750円
- ぜんざい380円
- アイス付きワッフル400円。
- ハーブティー各種400円
- ホットコーヒー380円
- 生ビールとハイボール各500円
- モーニングセット500円
自分用メモです。
旗振茶屋は食事メニューがあまりありませんでした。ハイキング中に腹ごしらえするならココですな。
おらが茶屋から栂尾山(つがおやま)(26分)
おらが茶屋の先で、須磨アルプスはいったん途切れます。
高倉台団地というエリアを通り抜け、栂尾山に再度登る格好となります。
長い階段。おりるのはいいのですが、帰りのことを思うと⋯⋯。
上の2枚と似た写真ですが、高倉台団地の町並みがパキッと写っているので載せました。団地の先の山が栂尾山。
その先に須磨アルプスの核心部がひかえているのですが、その雄姿はここからでは拝めません。
高倉台団地のなかをテクテク歩きます。樹木がたくさんあって、気持ちがいいですネ。人気(ひとけ)は少ない。
歩道橋を渡ります。この下の道路は、第二神明の須磨インター出入り口に面しているため、交通量が多いのです。
20年くらい前、ここからよく第二神明に乗りました。なつかしさがこみあげてきます。
ふたたび山へ入ります。まずは400段ほどある、気の遠くなりそうな階段を登ります。
登りきったら森のなか。森林浴を楽しみながらアップダウンのあるコースを歩きます。
道標にしたがって歩けば、道迷いはありません。
眺望がひらけました。高倉台団地越しの明石大橋です。
栂尾山のてっぺんに着きました。展望台がありました。
展望台にあがってみました。
北東の方角に須磨アルプスの核心部である岩山が見えますネ。
これも展望台から撮影した写真。大都会神戸の町並みが広がっています。
さぞかし夜景が美しいことでしょう。
栂尾山(つがおやま)から馬の背(11分)
ほとんど一本道ですが、道標があります。もちろん横尾山・須磨アルプス方面へ。
薄々感づいてはいましたが、コース全体を須磨アルプスが内包しているわけではなく、須磨アルプスとは馬の背のあたりのゴツゴツした岩山だけを指すのですネ。
ようやくもやもやが消えて、スッキリしました。
この誤解を解くためにこの道標は存在しているのかもしれません。
横尾山頂に到着しました。展望はよくありません。
登山道を歩いていると樹木がたまに途切れ、海が顔をのぞかせます。見飽きることはありませんネ。
ほらまた。チラリズムって、見えっぱなしよりいいですね。
ついにやってきました、須磨アルプス。
その名勝として知られる「馬の背」は、写真の中央やや上にある一段高くなった細長い部分です。
左に街、右に海。それらを区切るようにごつごつした岩肌がむき出しになっています。いろんな山に登ってきましたが、日本アルプスを含めてほかではなかなか見ることのできない景観です。
きてよかった。
須磨アルプスが近づいてきます。高い場所から俯瞰しているおかげで、全体像がよくわかります。
馬の背は足の置き場が狭く、左右が切れ落ちている模様。ゾクゾクします。
喜んでいるわけではありませんヨ。脳みその自己防衛本能が生命の危機を察知し、コルチゾールとアドレナリンとノルアドレナリンを分泌して危険に備えろと指示を出しているのです。
いま僕は、強い不安感と恐怖感に包まれています。
青いジャンパーを着た男性が、馬の背をフツーにわたってきます。
実際にその場に立ってみれば意外に何でもないのかもしれない、僕の自我がそんな淡い期待にすがろうとしています。
高所恐怖症の僕にしたって、ほんとうなら馬の背を行きつ戻りつして帰路につきたいのです。
須磨アルプスの岩山を越えるには、鉄の階段を一度おりていく必要があります。
そこから岩肌にとりついて、ロッククライミングの真似事をするのです。
といってもこれは怖くない。上だけを見て四肢を使って登っていけばいい。正面の岩山は写真だけ見ると大変そうですが、手足を引っ掛ける場所がちゃんとあるので、難なく登りきりました。
ガシガシ登れるので痛快。とても楽しかったですネ。
この写真は岩を登りきったあと、振り返って撮影したものです。つまり横尾山や栂尾山方面。馬の背は僕のうしろにあります。
写真の撮影時刻を見ると、2分ほどで登っています。あっという間でした。
きびすを返して馬の背に挑む。さあどうか。いけるか。
うん、これは落ちたら死ぬやつ。
横風もある。
再度きびすを返し、帰路につきました。
実は最初の1歩か2歩、馬の背に足を乗せてみたのです。その時点ですでに全身が硬直していたので、無理と判断しました。できたら渡ってみた感想をお伝えしたかった。もうひとつ。馬の背を通過して下山し板宿駅から電車で帰る、というのが一般的な登山コースですが、僕がこんな話をしたことでやめてしまう方もおられるかもしれない。それはいけない。つけくわえておきますが、僕以外の登山者は老若男女みな躊躇なくわたっていました。大丈夫です。きっとあなたは。
岩場は岩場でもこういう岩場なら大歓迎。鎖を見るとワクワクします。でも両サイド絶壁の痩せ尾根、あれだけはいけません。
大キレットなんて一生無理ですネ。涸沢へ行っても穂高はカールから見あげるだけ。それで満足です。
帰り道の瀬戸内海もきれいだ。
同じような景色をずっと見ているのですが、午前と午後では光線が変わります。山や海や町の表情もちがって見えます。
そんなわけで、山行記録もそろそろおしまいです。
このあと往路と同じくらいの時間で駐車場に着き、実家まで余韻にひたりながらクルマを走らせました。
きょうも無事に帰ることができてよかった、よかった。