国道299号線を左折し、武甲山までの一本道に入ると、ほかの山にはない異様な雰囲気に圧倒されます。
路面にまっしろい砂塵が積もっていて、その砂塵を巻きあげながらダンプカーが行き来しています。ところどころにある工場から出たり入ったりしているのです。
いったい何なのか。じつは武甲山(ぶこうさん)は、石灰岩の採掘場なのです。
このため秩父盆地から武甲山を見あげると、山の片側斜面が切り崩され、山容は見るも無残。とても痛々しい。昔は緑の豊かな山だったそうですが、いまや面影はありません。
きょうの山行、大丈夫かな、とクルマを走らせながら少し不安になりましたが、心配はいりませんでした。山道を歩きはじめたら豊かな自然があふれていました。
ヒマワリ
もくじ
子どもも無理なく登れる、武甲山の登山コース
武甲山は標高1304メートルで、難易度は中級くらい。
僕らは今回、以下のルート(紫色の線)を歩きました。これは表参道と呼ばれるコースでして、山頂の御嶽神社へ参拝する人たちが昔から利用し、整備してきた山道です。
武甲山登山コースタイム
標準コースタイムは、このとおり。
- 一の鳥居から表参道登山口:30分(40分)
- 表参道登山口から大杉の広場:60分(57分)
- 大杉の広場から武甲山頂:70分(40分)
- 武甲山頂から大杉の広場:60分(50分)
- 大杉の広場から表参道登山口:50分(50分)
- 表参道登山口から一の鳥居:20分(30分)
【往路】2時間40分(2時間17分)/3.5キロ【復路】2時間10分(2時間10分)/3.5キロ
※()内は、実際にかかった時間です。
武甲山へのアクセス
クルマの場合(カーナビ設定方法)
僕らはクルマでしたから、カーナビをセット。あとはおしゃべりしたり、コンビニで調達した朝食を食べたりしているうちに登山口に到着しました。
秩父の山は初めてだったのですが、かなり山深くて、大きな道の駅なんかも近くにあって、埼玉という感じがまるでしませんでした。甲信越あたりにきているような印象でした。
電車の場合
西武鉄道「横瀬駅」から「一の鳥居」まで徒歩かタクシーで行き、行きは僕らと同じルートを歩く。下山は、武甲山の西側にある秩父鉄道「浦山口駅」へ向かうのが一般的だそうです。
もちろん「横瀬駅」に戻ってもいいと思います。ただアスファルトの舗装路を(往路で)2時間近く歩くことになります。帰りも同じ道をたどるとなると、登山靴ではちょっときついかもしれません。
親子登山記録:杉林を歩き、表参道経由で武甲山登頂、御嶽(おんたけ)神社を参拝(11月初旬)
一の鳥居の駐車場に到着
この先が一の鳥居で、駐車場もあるはずなのですが、これだけのクルマが路駐しています。もう満車なのか。
ちなみに現在、午前10時25分。ちょっと遅くなってしまいました。ここまでタクシーで来ている登山客も何組がありました。きっと西武の横瀬駅からでしょうね。
満車かどうか確認するため、駐車場へ。
あれが一の鳥居ですね。たしかにクルマがたくさん停まっています。
狼の狛犬が2体、神さまの棲む山を守っています。
狼の石像のアップ。迫力があります。
御岳神社とか御嶽神社とかいう名の、山岳信仰系の神社では古来、獅子の代わりに狼を狛犬とする習慣があるそうです。
ほぼ満車ですネ。さきほどの道へ戻り、路駐するほかありません。
看板は、武甲山から子持山、大持山を経て、この一の鳥居へ戻ってくる周回コースを紹介しています。ほんとうはそうしたかったのですが、娘の体力のことを考えて、今回は武甲山を往復するだけにしました。
一の鳥居から表参道登山口まで(40分)
さあ、出発です。まずは杉林のなかを行きます。
沢沿いの道。きれいを水を豊富にたくわえている山のようです。道すがら、ニジマスの養殖用プールなんかも見かけました。
喫茶店があります。
こじゃれたお店ですネ。熱々のコーヒーでも飲んでいきたいところですが、まだ歩きはじめたばかり。帰りの楽しみにとっておきましょう。閉まっていたらあきらめます。
天然のマイナスイオン発生機。
比較的平坦な道がつづきます。
写真を撮りながらですので、娘の後塵を拝しています。背中さえ、もう見えない。
登山道の入口の道標は見逃したようです。写真がありませんでした。
大杉の広場まで1キロとあります。登山口から大杉の広場までは1.1キロですから、この100メートル手前に登山口を示す道標があったはず。
表参道登山口から大杉の広場まで(57分)
ようやく本格的な山道となってきました。ここから傾斜がきつくなってきます。
樹冠の隙間から落ちてくる木漏れ日が、地面をまだらに照らしています。なんとも神秘的な光景です。僕らの目に見えないだけで、草木の精霊があっちこっちにいても不思議ではありません。
小さな沢をおっかなびっくりわたっている小学2年生。
ちょっとまえから水音が聞こえてくるなあと思っていたら、不動ノ滝に着きました。
都会育ちの娘は、こういう小さな丸太の橋もこわがります。
不動ノ滝の水は飲用できます。この先飲み水は手に入りませんので、水筒の水が減っていたら補給しておくとベター。
山頂のトイレは雨水利用のため、慢性的に水不足。ここにあるペットボトルに滝の水を入れて、山頂まで運んでください。そう書いてあります。
桟橋をわたります。
「武甲山御嶽神社参道」と彫られた、りっぱな石柱。娘より大きいですネ。
その隣に丁目石があります。ここは二十丁目。帰ってから調べたら、この表参道には山頂まで52の丁目石があるそうです。どこまで来たかの目安になります。
杉、杉、杉。とにかく杉の多い山。高度成長期の植林政策によって、現在そういう山が日本全国にたくさんあるわけですが、杉林中心の森は暗いのが難点⋯⋯。
植林帯は急坂がつづきます。娘も疲れてきた様子。
小さな祠。どんな神さまが祀ってあるのだろう。
大杉の広場に到着です。大杉の左に「あと60分」の立て看板。
それにしても立派な杉の木ですねえ。
ほかの木が子どもに見えます。建築資材としての杉は、植林してから伐採できるようになるまでにおよそ60年かかるとか。そう考えると、大杉をとりまくほかの杉は実際、まだまだ子どもといえるでしょうネ。
大杉の広場は標高1000メートル。ここには山頂まで50分と書かれています。
標高1295メートルのところ、手書きで1304メートルと書き足してあります。これ、ほかでも見ましたが、山の高さが9メートルも高くなるのはどういうわけでしょう。隆起したのか、最初の計測がまちがっていたのか。
あと小さいですが、「熊にご注意ください!!」の貼り紙があります。秩父ですし、やはりクマがいるンですね。
下のほうの枝に葉がないのは自然な状態なのでしょうか。枝打ちにしては中途半端です。屋久杉なんかとは雰囲気がちがいますネ。品種がちがうのかもしれません。
大杉の広場から武甲山頂まで(40分)
ひと息入れたら、先を急ぎましょう。もう正午をだいぶ過ぎています。おなかも減りました。
丸太がならべられた階段がつづきます。こういうのは単調で苦手です。
黙々と歩いています。
上手に岩をよけて、ジグザグに登っています。
単調な山道。娘もちょっと退屈顔。
突然、駆けだしました。退屈きわまってのことかと思いましたが、ちがいました。
うしろから大人の男性4人が追いかけてくるからだそうです。
なんのプレイ?
48丁目。丁目石はぜんぶで52あるわけだから、あと4つで山頂です。
頂上付近までくると、杉の木もまばら。山道には日差しがたっぷり差し込んで、とても明るい。
ただし武甲山の植物相がほぼ杉のみで構成されている、という点は変わりません。
走って逃げたにもかかわらず、4人の男性たちとの距離は1ミリも縮まっていませんでした。
たいらな場所に出ました。トイレらしき建物もあります。おそらくここが山頂でしょう。
右へいけ、とのこと。
シートを敷いて、お弁当を広げている登山者が幾人か見えます。
僕らも早くお昼にしたいのですが、できるなら見晴らしのいいところで食べたい。
お弁当を食べる場所を求めて、娘もあちこちうろついています。
展望台とやらはいずこに?
おなかが減ってもう動けない、のポーズが出ました。
御嶽神社に到着。この奥に展望台があるようなので、参拝してから行ってみることにしましょう。
昼食はそれまでお預けです。
御嶽神社を参拝し、展望台から秩父の街なみ、山なみを眺む
社殿は、この建物のなかにあります。この建物はなにかというと、お社を雨風から守るためのもの。
門の両脇には、やはり狼の狛犬があります。一の鳥居の狛犬とは、すこしデザインがちがいます。
二礼二拍手一礼。
武甲山の解説がありました。
これによると、この山の北半分は2億年前の石灰岩からなるそうです。採掘がスタートしたのは大正時代。高度成長期に採掘量が増加し、急速に山容が変わっていったとのことです。
祠の向こうに鉄柵がありますネ。展望台はあの向こうにあり、入っていけるようになっています。
標識と方位盤があります。ここが山頂ということで、どうやらまちがいなさそうです。
大学生の一団が、方位盤をとりかこんで談笑しています。
山頂標識の向こうに柵があります。その先は、石灰の採掘によって切れ落ちた崖となっております。
眼下には秩父市街、秩父の山々が広がっています。霞(かすみ)がかかっているのが残念です。
雄大な景色。思わず深呼吸。
方位盤で山座同定ができます。でも今日は霞がかかっているため、遠くのほうははっきりと見えません。
4人組の大学生に写真を撮ってもらいます。
すこし話しましたが、すこぶる感じのいい好青年たちでした。彼らから逃げていたことに、娘はまるで気づいていない様子です。
このあと御嶽神社のまえでお弁当を広げて食べました。
下山:武甲山頂から一の鳥居の駐車場まで(2時間10分)
お昼をすませて撤収したら、午後2時をまわっていました。急いで下山せねば。
夕方ともなれば、山のなかはもう相当に薄暗いですからネ。杉の木ばかりの山はとくに。
気温も少しずつさがってきました。沢の水の流れも寒々しく感じます。
自分のペースで慎重におりてきます。
ハイ、ぶじに下山。今回もおつかれさまでした。
晩御飯に、秩父のおいしいおそばでも食べて帰ろうネ。
おしまい