目的地 | 金峰山(きんぷさん) | |
エリア | 奥秩父(山梨県甲府市、長野県南佐久郡川上村) | |
登山レベル | 中級★★ | |
標高 | 2599m | |
登山口標高 | 2362m(大弛峠) | |
総歩行距離 | 約8km | |
総歩行時間 | 4時間30分 |
もくじ
金峰山の基本情報
金峰山は、奥秩父にある標高2599mの山。山梨と長野にまたがり、山梨側では「きんぷさん」、長野側では「きんぽうさん」と呼びます。
秩父山地の最高峰は北奥仙丈岳(きたおくせんじょうだけ、2601m)で、金峰山は2番目。でも、日本百名山の一山であることから、人気はこっちが上です。
山腹には深い原生林が広がり、頂上付近は森林限界を超えることからアルペンチックな景観が楽しめる。これも金峰山登山の大きな魅力。
金峰山の登山適期
登山に適しているのは6月~10月。冬でも登れますが、雪山登山となります。
おすすめは、この季節。
- 5月下旬~6月中旬:森林限界付近でシャクナゲが群生
- 10月中旬~11月上旬:紅葉の季節
なお頂上は2500mを超えます。ひとたび天気が崩れると、厳しさは低山の比ではありません。
10月末には降雪も見られます。風雨や寒さに対する備えは十分にしておく必要があります。
金峰山のトレッキングコースマップ
主要な登山口はこちら。
- 大弛峠(おおだるみとうげ)
- 瑞牆(みずがき)山荘
- 金峰山荘(廻り目平キャンプ場)
一番人気は、大弛(おおだるみ)峠から入るコース。クルマで通行可能な峠としては、日本最高所(標高2361m)。金峰山山頂との標高差は238mで、2時間半でピークを踏めます。もっとも手軽かつ最短のコースです。
北東には同じく日本百名山選定の甲武信ヶ岳(こぶしがたけ)がありますので、あわせて登る手も。ただ大弛峠から甲武信ヶ岳まで6時間以上かかりますから、1泊だと厳しいかもしれませんが。
ついで人気なのが、山梨県北杜市の「瑞牆(みずがき)山荘」から入山するコース。シーズン中はJR「韮崎駅」から登山バスの運行がありますし、瑞牆山荘には無料駐車場(100台~)も。交通至便。富士見平小屋(テント場あり)を拠点にして、日本百名山選定の瑞牆山(みずがきやま)と合わせて登る方もおられます。
廻り目平(長野県川上村)から入る手もあります。金峰山荘(きんぽうさんそう)が管理するキャンプ場(廻り目平キャンプ場)の奥から入山できます。
ちなみにこの廻り目平キャンプ場は、わが家のご用達。標高1566mと夏でも涼しいし、管理は行き届いているし、自然豊か。しかも直火OK。ワイルドなバーベキューや焚き火が満喫できるのです。キャンプと金峰山登山を一挙に楽しめます。眺望は上記2コースのほうがずっといいですが。
直火OKの廻り目平キャンプ場(長野県)で、親子キャンプ&焚き火バーベキュー満喫!どのコースも難易度はさして高くありません。初心者でも問題なく登れると思います。
ヒマワリ
金峰山(大弛峠)へのアクセス
電車・バス
JR中央本線「塩山駅」で下車。大弛峠までバスが出ている。タクシーの場合、大弛峠まで70分くらい(1万円ちょっと)。
マイカー
中央道「勝沼IC」から国道20号へ。その後、国道411号、クリスタルライン、川上牧丘林道を経て、大弛峠へ。大弛峠に無料駐車場(20~30台)があります。
人気の山なので、駐車場は混雑します。休日は満車率が高いので、早出を心掛けるのが無難。
川上牧丘林道は舗装されているものの、自然災害や復旧工事、あるいは大雨の際は通行止めになります。冬場も通行止めです。
大弛小屋への宿泊、テント泊について
営業期間は4月末~11月末。
宿泊料金は、
- 1泊2食:7500円
- 1泊3食:8300円(昼弁当つき)
- 素泊まり:4500円
- テントサイト利用料:800円/人
テント場は大弛峠の駐車場に隣接しています。
この記事の情報は、あくまで僕が僕自身のためにまとめた備忘録とご理解ください。歩行時間などは『山と高原地図』を参考にしました。データが古い、あるいは間違っていることがあるかもしれません。登山の際はとにかく自分で地図とにらめっこし、経験や体力と相談しながら無理のない計画を立ててください。実際の山行に先だっては、かならず登山用の地図を購入してください。地図のない登山は遭難のもと。ご家族を悲しませたり、他人に迷惑をかけることにもなりかねません。無事に帰宅するまでが登山です。
アルペンムード漂う金峰山、子どもと最短ルートで登る
金峰山は日本百名山の一座。さらに新日本百名山、花の百名山、山梨百名山にも選定されています。山頂には、蔵王権現が祀られています。
亜高山帯の森を抜ける登山道は、空気がほんとうに澄んでいて、うまい。そして涼しい。
今回の僕らが訪れたのは、7月中旬。梅雨のさなかで、東京は蒸しむしとしていましたが、大弛峠に着くとすでに肌寒い。Tシャツの上からフリースやナイロンジャケットをはおって出発しました。
大弛峠(おおだるみとうげ)~朝日峠(30分)
駐車場が満杯だったため、奥の林道に駐車しました。歩きはじめた時刻は、8時ジャスト。
駐車場の奥に登山口と道標があります。金峰山まで4.2kmとのこと。
反対側には国師ヶ岳の登山口があります。そっちへ100mほど行くと山小屋(大弛小屋)があります。
大弛小屋に宿泊あるいはテント泊して金峰山と国師ヶ岳をセットで登るのも楽しいでしょうね。小屋の収容人数は約50名。軽食メニュー、水洗トイレもあります。
この写真のすぐ右側に、テント場があります。
テントが干してありました。テントサイトはちょっと狭いです。眺望もないです。でも目の前が駐車場で、トイレも近い。便利そうです。
さあ、登山道へ踏みこみました。
コメツガやシラビソなどの針葉樹林の森がつづきます。写真はシラビソかな。間違ってたらごめんなさい。
しばらくは急な登りです。
すぐになだらかな尾根筋へとあがります。
写真手前はコメツガかしら。間違ってたら、どなたか教えてください。
左手に奥秩父の山々を望みながら、尾根筋を行きます。
亜高山帯の森は、やはり低山とは雰囲気がちがいます。空気も引き締まっている気がします。
陽が差してきました。
富士山が姿をあらわしました。テンションがあがります。
少しくだって朝日峠に到着。
朝日峠
朝日峠にはかつて、信州側と甲州側からの峠越えの道が交わっていたそうです。いまその名残はありません。
シラビソに囲まれた広場の真ん中に、石が積まれています。昔のひとが積んだのでしょうか。
ダケカンバの老木が、僕らの頭上に大きな枝を腕のように伸ばしています。
このダケカンバ、足下はおぼつかない様子で、たくさんの杖に幹を支えてもらっています。
ヒマワリ
朝日峠~朝日岳(30分)
ふたたび尾根を登ります。
苔むした倒木などがある、濃密な樹林帯のなかへ。
初夏の日差しに、草木の緑もいっそう映えて見えます。
鬱蒼とした樹冠をくぐり抜けた光が、細い雨のように降りそそぎます。
ふいに視界が開けると、立ち枯れの木のあいだから、またまた富士山が顔をのぞかせました。
小さなアップダウンはあるものの比較的ゆるやかな道を行きます。すると、小さな岩場があらわれます。
この岩場を越えると――。
平坦なガレ場に出ます。展望が開けました。
南アルプスや富士山が視界にドーンと飛びこんでくる……はずだったのですが、このとき富士山は雲のなかに引っ込んでいました。
けれども奥秩父の山々が眼下に広がっていて、それだけでも十分に目を楽しませてくれます。心が晴ればれとしますね。
写真は甲州側(南東)。
こっちは信州側(北)。白く見えるのは、長野県川上村のレタス畑でしょうかね。
レタス畑の手前の岩峰のかたまりは、小川山。フリークライミングのメッカ。
ガレ場ですこし休憩してから、ふたたび樹林のなかへ入ります。
ここでもシラビソの立ち枯れが目立ちます。虫害とか病気とかでなくて、自然のサイクルらしいですが。
ゆるやかな道をズンズン進んでいきます。裸の樹間から山々が望める、開放的な道行きであります。
雲のうえから富士山がすこしだけ見えました。はっきり全体が見えるよりありがたい気がするから不思議。ちらりズムの妙。
山道脇には特徴的な葉を持つ植物が枝を伸ばしています。シャクナゲです。開花の時期は6月。ひと足遅かった。
朝日岳に到着しました。
ヒマワリ
先客がたくさんいます。わりとにぎわっています。
朝日岳山頂の西側から、本日の目的地、金峰山の山容が見えます。山頂の五丈石(ごじょういわ)も小さく確認できます。中央やや右上の、靄にかすむ小さな突起です。
ここから標準コースタイムで90分。
カミサン
隣でカミサンが目をまるくしています。
距離的には朝日岳はコースの中間地点。ここから標高差100mほどくだって、今度は金峰山まで登っていきます。行動食を軽く口にしてから、ガレ場をおりることにしました。
朝日岳~金峰山(90分)
このガレ場は、今回のコースでもっとも急な坂道。娘もたじろいでいます。
おっかなびっくりでしたが、スリップしやすいガレ場を無事くだりきりました。
さらにくだっていきます。
花壇みたいなものがあります。なんだか、かわいい。なんの植物かはわかりません。
深い原生林のなか、朝日岳と鉄山の鞍部へとくだっていきます。
苔に覆われた倒木。こういう風景はいつどこで見ても、心を奪われます。なぜだろう。
こういう光景にも心惹かれます。
そしてふたたび登りに転じます。
鉄山山頂との分岐。この二股を左に見送り、山腹を横切るように進んでいきます。
アズマシャクナゲが群生しています。6月には美しい花を咲かせます。
樹林を抜けて、金峰山へとダイレクトに延びる稜線にあがります。
森林限界を超えました。シラビソに代わってハイマツ帯が広がっています。
ハイマツのアップ。
右手には、信州側の展望が完全に開けます。小川山の岩峰群が眼下に、一望のもとに見わたせます。
石がケルンのように積まれていました。
前方のとんがった部分、靄にかすんだあたりが金峰山の山頂。尾根上に乗り、積み重なる岩を越えて山頂をめざします
2年前の娘は、このくらいの岩でも相当に怖がっていました。いまは大きな岩も黙々と乗り越えています。頼もしい。
北西には、瑞牆山(みずがきやま)。
振りかえると、じつにのびやかな景観が広がっています。アルペンムードに胸が高鳴ります。
行く手には巨岩がごろごろと転がっています。飛び石を渡る要領で慎重に歩きます。
周囲にあるのは、岩とハイマツとダケカンバばかり。
みずみずしいダケカンバの葉。
娘よりすこし年上の少年が、お父さんのていねいな指導のもと慎重に岩を越えていきます。
一方、うちの娘の父親は写真を撮るのに夢中でして、きょうはほとんど何のアドバイスもしていません。
よくがんばっています。
ちなみにこのあたり、僕の背丈より大きい岩がごろごろあって、ルートを誤ると大人でも行き詰まってしまうのですが、尾根筋を右へ右へと行くようにすれば、難なく通過できます。帰りに気がつきました。
自分よりはるかにでっかい岩の連続に途中、娘が泣きべそをかく場面もありましたが、なんとか金峰山の山頂へとたどりつきました。
ヒマワリ
巨石が累々と積み重なる山頂から、金峰山のシンボルたる五丈石(ごじょういわ)がおぼろに見えています。
金峰山山頂
山頂から西へくだって、金峰山のご神体である五丈石の前へとやってきました。
五丈石は、高さ20mほどの花崗岩です。
ヒマワリ先生
と僕がいうと、
娘ちゃん
さっと顔が青ざめました。もちろんつくり話(笑)。
ここから右へ20分ほどくだると金峰山小屋(4月中旬~11月中旬と年末年始営業)があります。金峰山山頂にはトイレがありませんから、いざというときは金峰山小屋で借りるほかありません。
五丈石は簡単に登れそうですが、事故も発生しているとか。
その気もないのに「せっかくだし登ってみようかな」と僕がつぶやくと、「天気わるいから、登っても景色なんか見えないよ。やめたら」と娘が心配そうに言いました。
「うん。そうね。きょうはやめとくか。あーあ、残念」とか答えながら、僕は内心、胸をなでおろしていました。高いとこ、苦手ですもンで。
五丈石の右側には、小さなお社が祀られていました。
方位盤が設置されています。晴れた日なら、富士山、南アルプス、奥秩父、八ヶ岳、さらには遠く北アルプスまでが見わたせるようです。
が、本日は眺望ゼロ。
『日本百名山』(深田久弥)には、
急な登りにあえぎながら、頂上へ着いたのは十二時半だった。空は完全に晴れて、四周の眺めに私は狂喜した。しかしその頃はまだ、そこから見える山々のうち数えるほどしか登っていなかった。
とあって、頂上からの眺めにはおおいに期待していたのですが、残念。
風がビュウビュウ吹いていて、からだが冷えてきました。
僕はフリース、カミサンはフリースとナイロンジャケット、娘は薄手のダウンを着こみます。
五丈石のたもとの岩陰で昼食をとることにしました。
からだを温めるため、熱々の味噌汁をつくりました。出汁は、昆布と煮干しでとりました。
メインディッシュは鶏唐揚げの南蛮漬け。これは昨夜つくっておきました。
ヒマワリ先生
3人で奪い合うように南蛮漬けを頬張っていたら、なにか奇妙なものが視界をうろうろしはじめました。
パンダと同じ白黒のカラーリングですが、パンダは森林限界を超えてきません。笹がないから。
それは僕らのほうへ近づいてきて、すぐ隣を通り、岩のあいだへと立ち去りました。
娘がカメラを手に立ちあがり、あとを追います。
娘がカメラを向けると、敬礼で応じてくれたそうです。
ストームトルーパーがこんな場所でなにをしていたのでしょうか。
食事を終えてコーヒーを飲みながらふと視線をおとすと、コケモモのかわいらしい花が咲いていました。
金峰山山頂~大弛峠(2時間)
おなかもいっぱいになったし、そろそろ下山することにします。
帰りは大きな岩石群を避けて、左の安全な小路を行くと、岩のアーチが出てきました。
前方から登山者がどんどん登ってきます。やはりこちらが正規ルートだったようですね。
天候がすぐれません。予報では雨は降らないはずなのですが、いまにも降りだしそうな気配。早く下山せねば。
ケルンみたいなもののあるさきほどの広場に人だかりができていました。
テン泊装備の高校生の集団とか、親子連れとか、お年寄りの団体とか、とにかく老若男女が行き交っています。
現在13時過ぎですが、この時間からでも登ってくる登山者はあとを絶ちません。
ぽつぽつと小雨が降りだしましたので、僕らは急ぎ足でどんどんくだっていきます。
途中、シカに遭遇。このときばかりは足をとめます。
娘は野生のシカを見るのがはじめてで、眼をキラキラさせています。
僕らの目の前を悠々と横切っていきます。筋肉のなめらかな動きがとっても美しい。
本降りになってきました。
雨が森の香を立ちのぼらせ、やさしく鼻孔をくすぐります。雨音が耳に心地よく響いています。
ややきつい登りを経て、朝日岳まで帰ってきました。
金峰山も五丈石も完全に雲のなかに隠れています。
朝日岳と朝日峠の途中にあるガレ場もガスに包まれていました。
往路の眺望はなく、高度感もまったくありません。
大弛峠へと戻ってきました。
これにておしまい。おつかれさまでした。
テン場には5張り。朝より増えています。
大弛峠をあとに帰路につきます。
現在16時。計8時間くらいの山行でした。
山行後の楽しみ(温泉と食事)
金峰山近くにある日帰り温泉では、「はやぶさ温泉」が有名です。泉質はアルカリ。100%源泉掛け流しです。
僕らも下山後に立ち寄るつもりだったのですが、予定より下山が遅れてしまったので、今回はとりやめました。
参考 はやぶさ温泉その代わり、帰りは青梅街道をのんびりと走り、山城屋でおいしい鰻を食べることにしたのでした。
山城屋(東京都青梅市日向和田2-306-4)。昭和ノスタルジーを感じさせる店内。異様に落ちつきます。食べ終えたら、布団を敷いてそのまま寝てしまいたい。
川魚料理からお蕎麦、定食、一品料理までそろいます。が、特筆したいのは、三河産の鰻重が破格の2600円で食べられること。ココの鰻は蒸しがメインで、身がふわっふわ。最後にさっと焼きを入れていますから、炭の香ばしいかおりも楽しめます。
大弛峠~金峰山のコースタイム&コースマップ
【山行日】2019年7月13日
【歩行時間】6時間15分
【歩行距離】7.86km
【標高】最高2599m、最低2362m
【累積標高】上り411m、下り411m
【コースタイム】往路:大弛峠→(45分)→朝日峠→(45分)→朝日岳(120分)→金峰山→(10分)→五丈石/復路:五丈石→(5分)→金峰山→(75分)→朝日岳→(40分)→朝日峠→(45分)→大弛峠
【主な装備】バックパック(32L、30L、18L)、Tシャツ(化繊)、水3.6L、レインウェア、ゲイター、フリース、トレッキングシューズ、トレッキングポール、手袋、手ぬぐい、地図、コンパス、ファーストエイドキット、ヘッドライト、食料