娘を連れて、尾瀬で念願のテント泊をしてきました。
6月初旬のハイシーズン――。子どもですから、草花にはさしたる興味をふだんは示しませんが、ミズバショウの群生にはさすがに何か感じ入ったらしく、じいっと見入っていました。よく晴れた2日目の朝のことでした。
そして僕にこう言いました。
ヒマワリ
日本一の娘であることを再認識しました。
さて、その世界一の娘が感動した尾瀬の魅力をより多くの方にお伝えすべきだろうと、いま重い腰をあげてパソコンを開いたところです(戻ってはや3週間)。
まずは、尾瀬の全体像をおおづかみでまとめていきます。
というのは、はじめて尾瀬に行く際、僕も事前にネットでいろいろと調べたのですが、尾瀬のことをまったく知らない人間がパッと読んでパッとわかるページがなかったからです。
あっちこっちのサイトを行きつ戻りつして、計画を立てるのにちょいと難儀しました。
というわけで、
- コレ読めば初の尾瀬でも大丈夫!
- 一発で尾瀬がわかった気になれる!(行ってないのにわかるわけないから)
という内容をめざします。自分の備忘メモも兼ねます。
主なエリアおよびコースとその選び方、おすすめ、尾瀬への行き方、ベストシーズン、尾瀬の魅力などを順序立てて解説します。
後半部分では、宇宙一の娘の尾瀬探訪記を、写真をたっぷりちりばめてお届けします。よろしければ、そちらもあわせてご覧ください。
ヒマワリ
なおこの記事では、尾瀬の名峰たる「至仏山」と「燧ヶ岳」を登るコースについては割愛しています。登山者向けでなく、ハイカー向けの記事だから。ということもありますが、ほんとは自分が登ったことないから。しかしどっちも日本百名山。近いうち登ってきます。そのときはまた記事にします。
もくじ
尾瀬の基本情報
尾瀬は、群馬、福島、新潟、栃木の4県にまたがる国立公園。雄大かつ神秘的な自然が残り、貴重な動植物の宝庫です。日本を代表する景勝地。天然記念物の指定を受けています。
今回、僕らは3つの県境をまたいでのハイキングとなりました。東京からクルマで現地入りしましたから、通過した東京都、埼玉県、栃木県、茨城県をくわえると、全7県を2日間で移動したことになります。
娘と車中で気分アゲアゲになりました。
尾瀬の1年とハイキングに向くシーズン
尾瀬は、盆地状の湿原地帯です。標高は盆地の底でも1400mくらい。1000種近い高山植物が息づいており、5月下旬から10月中旬まで、僕らハイカーを歓迎してくれます。
とくに混雑するのは、ミズバショウ、ニッコウキスゲ、草紅葉(くさもみじ)の時期です。
冬のあいだ雪に追われていた湿原が、雪解けの時期を迎える。
本格的なハイキングシーズン開幕。
尾瀬ヶ原ではミズバショウやリュウキンカが開花。
標高が300m近く高い尾瀬沼でも、1週間ほど遅れて開花。
ハイキング最盛期。週末は大混雑。
ワタスゲの白い果穂が湿原を彩る季節。
ニッコウキスゲが湿原を覆う。
ミズバショウとならぶベストシーズン。週末は混雑。
オゼミズギクやヤナギラン、オゼヌマオザミ、イリンソウ、イワショウブなどが楽しめる。
気温が下がりはじめ、湿原は草紅葉(くさもみじ)の季節を迎える。
草紅葉とは、高山植物が木々より少し早く黄金色や茜色に色づく現象。高層湿原特有のもの。
週末は混雑。
広葉樹林の葉が赤や黄色に色づく、紅葉シーズン。
ミズバショウの季節とならぶ、尾瀬の風物詩。
初雪が降ると、翌年の5月までは訪れる人もほとんどいない。
尾瀬が雪に覆われ、深閑とした時間が流れる。
上記の2枚の写真は、僕が撮影したものではなくて、借り物です。提供元のブログには、もっとたくさんの写真がありますヨ。
参考 草紅葉の写真森の父さん尾瀬のトレッキングマップ
尾瀬の全体像はこんな感じ。エリアは大きく尾瀬ヶ原と尾瀬沼の2つに区分できます。
西に至仏山(しぶつさん、2228m)、東には燧ヶ岳(ひうちがたけ、2356m)が屹立し、南北も山に囲まれた盆地。お盆の底には湿原が広がります。
尾瀬に入山するには、5つの入山口があります。
- 鳩待峠:尾瀬ヶ原の玄関口として1番人気
- 富士見下:登山道を歩くため、登山者向け
- 大清水:尾瀬沼の玄関口としてポピュラー
- 沼山峠:尾瀬沼に最短で行ける
- 御池:燧ヶ岳や三条ノ滝へのアプローチ
標高は尾瀬ヶ原で1400m以上、尾瀬沼では1670mくらいありますから、東京よりずっと気温は低い。
一般に100m上がると気温が0.6度下がるといわれますから、尾瀬の気温は東京より8~10度低くなります。それを見越して、服装や装備を選びましょう。
尾瀬ヶ原のトレッキングコースの特徴
【尾瀬ヶ原ハイキングのPOINT】
- はじめての尾瀬なら、尾瀬ヶ原がおすすめ
- ミズバショウが咲く5月下旬~6月初旬が◎
- 9月下旬~10月上旬は紅葉が見ごろを迎える
- 尾瀬ヶ原への入山口は、鳩待峠か富士見下
- 鳩待峠が楽、富士見峠は登山者向き
- 橋街峠~山の鼻の区間は軽い登山となる
- 帰りは登りで、思ったより大変
- 日帰りでも、湿原の大自然を満喫可能
- 山小屋泊、テント泊は見晴で1泊がベスト
- 気温は街中より10℃近く低い(防寒着必須)
今回僕らが訪れた尾瀬ヶ原は、日本一有名な湿原地帯。春にはミズバショウが咲き乱れ、秋には紅葉が楽しめる大人気エリアです。全国から毎年たくさんのハイカーが訪れます。
尾瀬ヶ原の玄関口は鳩待峠と富士見下の2か所があり、ポピュラーなのは鳩待峠。尾瀬を訪れる人の半分が鳩待峠から入山します。尾瀬ヶ原(山の鼻)まで1時間ほどで、富士見下から入山するよりずっと楽ちんだからです。
ヒマワリ
なお僕らは今回、見晴のテント場(キャンプ場)で1泊しましたが、尾瀬のハイカーの半数以上は日帰りです。
この場合、コースごとの総歩行時間は、
- 山の鼻まで往復:行き1時間、帰り1時間20分ほど(6km)
- 牛首分岐まで往復:行き1時間45分、帰り2時間5分ほど(10km)
- 龍宮十字路まで往復:行き2時間25分、帰り2時間45分ほど(14km)
- ヨッピ吊橋まで往復:行き2時間55分、帰り2時間50分ほど(16km)
- 見晴まで往復:行き2時間55分、帰り3時間15分ほど(18km)
どのコースも帰りは20分よけいにかかります。というのは、山の鼻から鳩待峠まで行きは下りですが、帰りは登りだから。
ブナの原生林のなか、川に沿って木道を散策できるので、とっても気持ちがいいのですが、帰りは疲れます。ハイキングに慣れていない方は体力を温存しておきましょう。山の鼻の山小屋(3軒ある)でビールを飲んだりするとあとがツライ(自戒)。
それ以外は平坦な道で、歩行路のほとんどが木道が整備されています。アップダウンも少なく、歩きやすい道のりです。とはいえ、やはりトレッキングシューズを履いていったほうが安心。スニーカーとかデッキシューズで歩いている若者も少なからず見かけますが、僕らとは瞬発力もバネもちがいます。
ヒマワリ
尾瀬ヶ原へ向かうコースでいちばんポピュラーなのは、4のヨッピ吊り橋までの往復です。牛首からまず龍宮へ向かい、そこで腹ごしらえ。弁当を持参してもいいし、龍宮小屋の喫茶で食べる手もあります。そのあとヨッピ吊橋をまわって牛首に戻ります。尾瀬のハイカーの4割がこのルートを歩きます。
足腰に自信がないなら、山の鼻までにしておくのも一手。尾瀬ヶ原は目と鼻の先ですので、5~10分も行けば、大湿原とその向こうにそびえる燧ヶ岳の雄志が眺められます。山の鼻で食事をとり、名物の花豆アイスにかぶりつけば、尾瀬に来たなあ、という実感がひしひしと湧いてきます。
山の鼻には研究見本園というものがあります。こちら。
ここにも湿原があります。木道を歩いてぐるっと周回可能。1周20~40分。ミズバショウの季節ならきれいな群生が目を楽しませてくれますし、尾瀬に咲くほかの花々も見られます。鳩待峠と山の鼻の往復でもそれなりに尾瀬は楽しめるのです。
参考 研究見本園尾瀬保護財団尾瀬に泊まる(見晴の山小屋、テント場)
龍宮までは群馬県。その先は福島県。ここから先へ足を伸ばす日帰りハイカーはほとんどいません。そのため、龍宮から先はハイシーズンでもさして混在しません。
見晴まで行けば、6軒の山小屋が立ちならぶ、にぎやかなエリアに出ます。カフェや食堂や土産物屋があります。見晴の最前面にある弥四郎小屋の前のベンチでコーヒーブレイクとしゃれこめば、至福の時間が過ごせます。
見晴は、山小屋泊やテント泊にうってつけです。泊まりなら、満点の星空を鑑賞し、翌朝には朝もやに包まれた幻想的な湿原の風光を独占することができます。
【尾瀬見晴の山小屋の特徴】
尾瀬の山小屋のサービスをチェックしてみると、通常の山小屋のイメージとはだいぶかけ離れた印象。
- 食事:凝っている、おいしい(食べたことないから知りませんが)
- 部屋:基本的に個室を広々使え、1人1組の布団を用意している
- トイレ:水洗(ウォシュレットがあるところも)
- お風呂:アリ
ヒマワリ
尾瀬の山小屋の営業期間は、4月下旬から10月下旬。予約は4月あたりから開始。ミズバショウやニッコウキスゲのシーズン(5月下旬~6月初旬)はとくに混雑します。小屋泊を考えているなら、早めに予約するのがベターです。
尾瀬の山小屋は、基本的に個室です。が、混雑時は別。1人1畳くらいのスペースしか確保できず、相部屋になることも。
ほかの山域の山小屋と異なり、予約なしで泊まれる山小屋はありません。予約必須。キャンセル料もしっかりかかります(小屋と時期による)。
山小屋に泊まってみようと思った方は、こちらをご覧ください。尾瀬の山小屋すべてが紹介されています。
参考 尾瀬の山小屋ヤマケイの尾瀬ナビ【尾瀬見晴キャンプ場の特徴】
テント場(見晴キャンプ場)もよく整備されています。
トイレがきれい、水がうまい、予約不要と三拍子そろっています。予約も必要ありません。
ただし、燧(ひうち)小屋で、先に受け付けをする必要があります。混雑時は先に場所を確保し、幕営まですませてから受け付けする人もいます。
1泊800円/人。燧小屋のお風呂も利用可能(500円)。営業期間は5月末から10月末。
参考 見晴キャンプ場案内燧小屋尾瀬沼のトレッキングコースの特徴
【尾瀬沼ハイキングのPOINT】
- ベストはミズバショウの季節(6月初~中)
- ニッコウキスゲは、7月中旬~8月上旬
- 尾瀬沼エリアへの入り口は、大清水か沼山峠
- 大清水から、わりあい登りがつづく
- 大江湿原にはぜひ足を運びたい
- ビジターセンター付近に山小屋とテント場
- 気温は街中より10℃近く低い(要防寒装備)
燧ヶ岳(ひうちがたけ、2356m)は、東北地方の最高峰。日本百名山に選定されています。
この燧ヶ岳が1万数千年前に噴火してできたのが尾瀬沼です。
尾瀬沼は1周約9km、標高約1660m。日本有数の高地にある湖で、周囲には小沼や多くの湿原がひしめきあって点在しています。尾瀬ヶ原とはひと味ちがう、開放感のある景観が楽しめます。
尾瀬沼エリアで最大の見どころは、「花の湿原」と呼ばれる大江湿原。ビジターセンターから東北に向かって1.5kmつづく、尾瀬沼周辺で最大の湿原です。ミズバショウやニッコウキスゲの時期はまさに別天地。ほかにもタテヤマリンドウ、リュウキンカなど、四季の花々が湿原を飾ります。
ニッコウキスゲが橙色の絨毯のように群生する光景はとにかく必見。ミズバショウとならび、尾瀬を代表する風物詩です。
尾瀬沼は、尾瀬ヶ原ほど混雑しません。登山口は、大清水を利用する方がほとんどですが、沼山峠(会津側)から入るという選択肢も。沼山峠へのアクセスは東武線を使えば、それほど不便ではありません。歩行距離が、大清水から入山するよりずっと短くなります。尾瀬沼に行ってみたいけれど脚力に自信がない、という方におすすめ。
以下は尾瀬沼エリアの主要なコース。
- 大清水からビジターセンター経由で大江湿原の往復:行き3時間25分、帰り3時間5分(8.3km)
- 沼山峠から大江湿原経由でビジターセンターの往復:行き1時間5分、帰り1時間15分(6.4km)
- 沼山峠から大江湿原を経て尾瀬沼を一周し沼山峠へ:行き2時間45分、帰り2時間9分(6.9km)
- 大清水から大江湿原を経て沼山峠へ(会津街道):4時間20分(10.4km)
尾瀬ヶ原と尾瀬沼を一度に探訪するのは可能?
次のようなコースなら可能です。
- 鳩待峠~山の鼻~尾瀬ヶ原~見晴(宿泊)~沼尻~尾瀬沼東岸~沼山峠か大清水
- 大清水~尾瀬沼~沼尻~見晴(宿泊)~尾瀬ヶ原~山の鼻~鳩待峠
ただしミズバショウの時期は、三平峠(大清水~尾瀬沼間)や白砂峠付近(沼尻~見晴間)に残雪が残っていることがあります。事前に現地へ問い合わせてみてください。
鳩待峠(尾瀬ヶ原エリア)へのアクセス
電車・バス
JR上越新幹線「とき号」などで「上毛高原駅」へ。東京駅からだと5390円。そこから関越交通バスで沼田駅を経て戸倉(鳩待峠行きバス連絡所)へ。運賃は大人2450円、子ども1225円。戸倉でシャトルバスに乗り換えて、鳩待峠へ向かいます。運賃は片道大人980円、子ども490円。
5月中旬から10月中旬は、新宿駅、練馬駅、川越駅から戸倉へ高速バス(関越交通バス)も出ています。1日3便で、夜行もあります。新宿駅、練馬駅発は片道大人3800円、子ども1900円(ハイシーズンは大人4200円、子ども2100円)、川越駅発は大人3500円、子ども1750円(ハイシーズンは大人3900円、子ども1950円)。
マイカー
関越道の「沼田IC」で下車(練馬ICから約1時間20分)、信号を右折して国道120号へ。そのまま30kmほど入り、鎌田交差点を左折。国道401号へ。群馬県片品村の「戸倉」で県道63号へ入り、津奈木橋の先で右折。県道260号を登ると鳩待峠に到着します。
5月中旬~10月上旬の特定日は、マイカー規制が行なわれています。戸倉に車を停め、シャトルバスで移動。シャトルバスは1時間に1本程度ですが、ハイシーズンは乗り合いタクシーがガンガン出ているので、待たされることはほとんどありません。
戸倉の駐車場はキャパ530台。駐車料金は1日1000円。1泊2日なら2000円。バスも乗り合いタクシーも料金は同じ。片道大人980円、子ども490円。
大清水(尾瀬沼エリア)へのアクセス
電車・バス
JR上越新幹線「とき号」などで上毛高原駅へ向かいます。東京駅からだと5390円。ここで関越交通バスに乗り換え、大清水へ。運賃は2650円。
5月中旬から10月中旬は、新宿駅、練馬駅、川越駅から大清水へ高速バス(関越交通バス)も出ています。1日3便で、夜行もあります。新宿駅、練馬駅発は片道大人3800円、子ども1900円(ハイシーズンは大人4200円、子ども2100円)、川越駅発は大人3500円、子ども1750円(ハイシーズンは大人3900円、子ども1950円)。
マイカー
駐車場は240台が駐車可。1日500円。戸倉に駐車して、バスで大清水へ向かうこともできます。運賃590円。別途、戸倉の駐車料金が必要。1日1000円。
ここまでの情報は、あくまで僕が僕自身のためにまとめた備忘録とご理解ください。歩行時間などは『山と高原地図』を参考にしました。データが古い、あるいは間違っていることがあるかもしれません。登山の際はとにかく自分で地図とにらめっこし、経験や体力と相談しながら無理のない計画を立ててくださいネ。実際の山行に先だっては、かならず登山用の地図を購入してください。地図のない登山は遭難のもと。ご家族を悲しませたり、他人に迷惑をかけることにもなりかねません。無事に帰宅するまでが登山ですヨ!
尾瀬まとめ記事はこれでおしまい!
ようやく書き終わりました。
もっとこんな情報があったほうが便利! とか、ここ間違ってるぞ! とかいうお話がありましたら、コメント欄やメールなどでこっそり耳打ちしてやってください。こっそり修正を入れます(-_-)
ようやく僕ら親子の山行記に着手できます。
後半部はこちら。ぜひつづけてご覧ください。写真中心ですから、このページとちがってサクサク読めますヨ。
尾瀬ハイキング&親子テント泊(夏の尾瀬ヶ原~見晴キャンプ場)