企業がリストラを進めるため、退職金に加算金をプラスして、社員の早期退職をうながすというケースがあります。早期退職プログラムについて、いくつかの視点から考察してみたいと思います。
もくじ
厳しい転職市場、安易に早期退職に飛びつくのは危険
そもそも忘れてならないのは、現在の転職をめぐる環境は非常に厳しいということです。たとえば、ぼくは知るなかでこんなケースがあります。
ある外資系コンピュータベンダーで、全社員を対象に早期退職プログラムを実施したところ、数百人が殺到。けれども、同社の出身者が応募先でかち合うケースが多かったため、いまだに転職先がみつからず、条件がどんどん悪くなっている人が多い。
目先の条件の優位さにばかり気をとられ、安易に早期退職を選んでしまうのは危険なのです。
こうしたなか、早期退職プログラムへの応募を考えるならば、その内容を吟味することが需要。とくに意識したいのは、次の勤務先を円滑に決めることができるかどうかという点です。
早期退職プログラムは、転職のしやすさを目利き
早期退職プログラムを利用する場合は、転職先が探しやすい条件かどうかを確認すべきです。
1.退職までの期間に余裕があるか?
2.再就職あっせん制度があるか?
3.最低1年分の加算金があるか?
ひとつ目のポイントは、早期退職プログラムを選択してから、実際に退職するまでの期間がどのくらいあるのかということ。以前、ある人材紹介会社の社長に聞いたところ、「転職が比較的容易な30歳代でも、3か月はほしい」と指摘していました。
この社長によれば、こうしたケースで転職に失敗するのは、設定した転職活動期間が短い場合が多いといのこと。準備の期間が短いなかでうまくいかない状況が重なると、焦りばかりが募り、それが悪循環になります。このため、実際に退職するまでの期間がどのくらいあるか確認することが大切なのです。
勤務中に面接に出掛けることができるのかなど、時間的な融通が利くかどうかもカギになります。
ふたつ目のポイントは、再就職あっせん制度があるのかどうかです。主として、再就職支援会社へつないでくれるパターンが多いのですが、この制度を活用すれば、再就職の確率はぐんとあがります。会社が、複数の人材紹介会社へ転職希望者の情報をいっせいに流してくれるからです。
ただし過度の期待をするのは禁物です。なかなか現職レベルの転職は困難なうえに、その費用を本人に負担させたり、辞めてほしくない社員についてはプログラムの対象外という扱いで、早期退職そのもののメリットを享受できないようになっているケースもあるからです。
3つ目のポイントは、早期退職にともなう加算金がどのくらいになるかです。「ずっと以前は加算金が年収2~3年分という時代もありましたが、いまは1年分が目安です。
早期退職プログラムを転職の動機にしない
早期退職プログラムを選択するかどうかは、以上のポイントをしっかりと踏まえたうえで決めたいものです。このとき、なにより大切なのは足元を見据えた転職の意思があってこそ、という点。プログラムが転職の動機になっているなら本末転倒なのです。
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