プロの詐欺師の手口に学ぶ、ビジネスのテクニック

詐欺師のうごめくカジノ

物騒な見出しですが、明日の詐欺師を養成しようというわけではありません(笑)。

ずっと昔、奥田静夫さん(仮名)という詐欺師の方にインタビューしたことがあります。貴金属詐欺や骨董詐欺の名手として詐欺業界で名を馳せておられるとのことでした。興味深い話をいろいろ聞くことができたのですが、仕事にはならず、ボツになりました。

その話を書いてみようと思います。

この記事の主題は、詐欺にあわないために詐欺の手口を知っておこう、というようなものですが、ビジネスマンの方にも参考になる部分は少なくないはずです。

【詐欺】
他人をだまして金や品物をとったり、損害を与えたりすること。(新明解国語辞典)

【刑法第二四六条(詐欺)】
1. 人を欺いて財物を交付させた者は、10年以下の懲役に処する。
2. 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。

プロの詐欺師に聞いた、詐欺の手口って?

詐欺の手口といっても、結婚詐欺や保険金詐欺といった具体的な詐欺の仕掛け方を解説するのではありません。詐欺師の、仕事への姿勢や思考方法などです。詐欺を働く際の心得、とお考えください。

以下の文章の語り手は詐欺師の奥田静夫さんです。文中のわたしは、奥田さんの一人称となります。ぼくは、詐欺に手を染めたことなど、生まれてこの方一度もありません。

なお、文中、不適切な表現がありますが、語り手の意思を尊重し、そのまま記述しております。

標的を吟味する

相手がいなければ、詐欺は始まりません。でも、奪うものもない相手に、詐欺を仕掛けてたってしかたがない。

女性をだますにしても、30~40代のおつぼねさんや後家さんならたんまりと溜めこんでいるだろうけれど、貧乏人の小娘なんぞ相手にしても時間の無駄。年寄りを狙うなら、おんぼろアパートでひっそり死に神を待っている独居老人などでなく、当然ながら、貯金や土地、有価証券なんかをたんまり抱えこんでいる資産家がターゲットですな。

奪いたいものを有する標的を選ぶ、これが詐欺の成功への第一歩です。

標的と親密になる

仕掛ける相手が見つかったら、知り合って、それから仲良くなります。世話を焼き、楽しませてあげる。

仲良くなったな、と思った頃合いでふっと離れてみるのです。相手が自分を気にして電話でも掛けてこようものなら、時来たり、というわけです。

詐欺を成功させるのに一番大事なのは、標的を油断させることです。「こいつは絶対にオレ(あたし)をだましたりしない」という心境をつくりだすことが重要なのです。

詐欺に一番ひっかかりやすいのはだれだと思いますか? 身内です。関係が深ければ深いだけ、詐欺の成功確率はあがる、というわけです。

標的の話にじっくり耳を傾ける

標的と仲良くなるためには、相手の身の上話にじっと耳を傾けることが大切。本人の過去から現在、夢や目標、既往歴、悩み、コンプレックス、家族とのこと、親戚のこと、友人関係、恋人、仕事……。標的をまるはだかにするような心構えで話を聞く。いちいち相談に乗ってやる。

たまには自分の苦労話をするのも効果的です。日本人という人種は、苦労話が好物で、身の上話を聞いていったん相手に同情すると、相手への警戒心も雲散霧消するものです。

わたしが仕事をしていて思うのは、人という動物はすべからく、どんなに偉くなっても、地位を得ても、心の奥底では他人に自分を理解してほしい、やさしくしてほしいと願っている、ということです。こんなことをいうと変に思われるかもしれない、自分を見る目が変わるかもしれない、威厳を失うかもしれない、嫌われるかもしれない、こういう思いから、口をつぐんでいるだけ。

おまえのことならなんでも聞くよ、全部受け入れるよ、という気持ちを言葉と態度で示しつづけていると、やがてだれしも自分からぺらぺらと身の上を語りだすものです。

そうなればしめたもの。詐欺は情報戦です。国家機関にも、プロの詐欺師がいます。そう、スパイ。彼らは、最高に腕の立つ詐欺師です。

詐欺を仕掛ける前につかんだ情報の質と量が、詐欺の成否を分け、わたしたちの命をも左右するのです。

自分の不安を払い落とす

おカネを巻きあげたり、相手をだますことに罪の意識を感じて、ビクついていると、怯えがかならず態度になってあらわれます。標的に伝わって、不信感が生まれます。

相手が少しでも警戒心を抱いたら、その時点で詐欺は99%失敗します。わたしならあきらめる。

詐欺には、ゲーム感覚を維持することが求められます。仕掛ける側が気楽な心持ちでいれば、その気安さが相手を油断させ、警戒心を解きほぐします。相手の心に油断が生まれたら、詐欺は100%成功します。

標的を洗脳する

詐欺を成功に導くには、標的を油断させることがなにより大切。そのためには、詐欺の成功に必要な情報以外は一切与えないようにするべきです。

ほかの情報が標的の耳に入るのをシャットアウトする。それが難しいなら、ほかの情報はデタラメで、自分の情報だけが正しいのだ、と相手に信じこませることです。

先においしい思いをさせる

その筋の方々がお金持ちを違法カジノに引きこむ方法は、先に勝たせてやる、というもの。別段、めずらしくはありません。

ラスベガスも街ぐるみで同じことをしています。会社の金を100億近く使いこみ、いまもどこかの塀の中でくさい飯を食べているぼんぼん社長さんも、海外カジノでVIP待遇を受け、おいしい思いをさせられてから、目玉の飛び出るような借金を背負わされた。

仕掛ける前にうまい汁を吸わせる、というのは、他人の金をむしりとる常套手段です。詐欺にかぎった話ではありません。今日の新聞の折り込みチラシに書いてある「初回無料」「本日のみ半額」「来店者全員に500円のお買い物券を無料プレゼント」なども全部同じ仕掛けですよ。

数字を駆使する

儲け話を語るときは、具体的な数字を持ちだすことです。数字が本物かどうかなんぞどうだっていい。

数字が出てくると、それだけで信憑性が増します。学問のない人間ほど、数字をありがたがって、なんの根拠もなく信じてくれるものです。

三段論法を使う

論理的に話をするということも大切です。

儲け話を持ちかけられたとき、相手がたとえいい奴でもバカだったら、話に乗る人はいません。ですが、相手を切れ者だと思い、一目置いていたら、話はちがってきます。

わたしはふだんから三段論法を意識しています。「あの税理士は、税金操作のプロです。資産家の顧客を何人も抱えていますから」と話すより、「あの税理士は、資産家の顧客を多数抱えています。資産家はみな、お金にシビアで、税金を知悉しています。そういう資産家が信頼を置く税理士は税金操作のプロ。だから、あの税理士は税金操作のプロなのです」と話したほうが説得力がありますからね。

約束して守る

おカネのことで相手を信頼させるには、財布を忘れたとかなんとか理由をつけ、1000円くらいの小銭を借りることです。それから、約束の日までにきっちり返す。これを何度か繰り返す。

すると、相手の頭には「この人はカネにしっかりした人だ」という印象がすり込まれていきます。そうして、最後に大きなカネを動かす相談をする。すでに標的とのあいだには、カネのやりとりが何度もあり、信頼関係も築かれているから、なんのためらいもなく乗ってきてくれるのです。

身ぐるみはがさない

詐欺師にとって、一番恐いのは、詐欺が発覚することではありません。仕掛ける前なら、とんずらすれば、相手はあきらめます。

一番いけないのは、身ぐるみはがされた標的が、なりふり構わず仕返ししてくることです。なにもかも失った人間というのは、本当に恐いものです。失うものがなにもないから、逆上してなにしでかすかわかったものではない。

昔、有り金を全部まきあげたオンナに脇腹をブスッと……。ほら。

肝臓の下あたりにえぐれたような傷が生々しく残っていました。

詐欺に遭ったあとも、問題なく生活していけるおカネを残しておく、これが詐欺師の気遣いであり、トラブル回避のコツなのです。

 

あとがき

詐欺師の手口などけっして学ぶべきものではありませんが、帰納的にみると、商売の哲学を語っているといえなくもありません。

道徳的、仁義的に正しいとは思いませんが、モノを売るという行為は、資本主義における「善」です。ビジネスマンなら、知っておいて損はないかもしれません。

風の便りに聞いた話は、奥田さんは現在、税金操作詐欺のかどで逮捕され、服役中であられるそうです。ほんとかどうかは知りません。

photo credit: Jamie In Bytown via photopin cc

4 COMMENTS

ケンタロー

はじめまして!
ケンタローと申します^^

マネしちゃダメですけど参考になる記事ですね!
読んでいてすごく面白かったです^^

また遊びにきますね~

応援しています!

ノブ太郎

こんばんは!

読んでいていくつか思い当たる節がありましたが
特に『数字を駆使する』ってところには共感です。
なぜか具体的な数字を出されると、信憑性が
上がるように感じるんですよね…
ちょっと気を付けようと思いました。

また遊びに来ます♪

父花

ノブ太郎さん、こんにちは。コメント、ありがとうございました^^

思いあたる節がある? ひょっとして、ノブ太郎さんは詐欺師の方? あるいは詐欺被害者の方?

冗談です^^

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