吟遊詩人だったホメロスがギリシア神話をまとめた書物だ。1万2110行もある長編叙事詩。同じホメロス作の『イリアス』よりのちに書かれたといわれている。
主人公は、ギリシア伝説の英雄オデュッセウス(彫刻の写真)。英語名は、ユリシーズ(Ulysses)。
『オデュッセイア』は、オデュッセウスがトロイア戦争から凱旋する途中、海上で放浪することとなり、幾多の試練や苦難を乗り越え、故郷へ戻るまでをつづっている。
『イリアス』の主人公もオデュッセウス(頭の写真)だけれど、『イリアス』よりファンタジックな要素が多くてキャッチー。このため万人受けし、『イリアス』よりよく人口に膾炙している。
ダンテの『神曲』(1307-1321年作)や、ジョイスの『ユリシーズ』(1922年刊)などが、この『オデュッセイア』に着想を得て書かれたことは有名だ。
あらすじ
トロイア戦争に参加した英雄オデュッセウスは、大活躍だった。木馬の奇策をくわだて、ギリシア軍をみごと勝利に導いたのだ。トロイア落城後、彼は仲間とともに帰路につく。だが、ひとつ目の野蛮な巨人キュクロプスたちの暮らす島にたどりついたとき、キュクロプスのひとり、ポリュフェモスの目をつぶしてしまう。このことが海神ポセイドンの怒りを買い、彼らは帰路を邪魔されることになった。
オデュッセウス一行は、危険な海域への迂回を余儀なくされる。その旅の途上、魅惑的な魔女キルケの住むアイアイェー島では部下を豚に変えられたり、上半身が女で下半身が鳥の姿のセイレンたちの住むオギュギア島では、美しい歌声に幻惑され殺されそうになったりと、さまざまな艱難辛苦に見舞われつつもなんとか機転を利かせては難を逃れ、ファイケアス人の国へとたどりついた。
そしてその国から故郷イタケーへと戻り、貞淑な妻ペネロペに求婚していた貴族の男らを次々に射殺して、20年ぶりに幸せな暮らしをとりもどした。
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