まず、覚えておきたいのは、基本給のカットは完全に違法だということ。会社の都合で、社員の給料、つまり労働条件を変更することはできません。にもかかわらず、近ごろは給料を一方的にカットするケースがよくあります。
これは企業側が、グレーゾーンを上手に利用しているからです。たとえば、こんなやり方。
- 諸手当をカットしていく。
- 管理職から降格させ、役職手当を奪う。
- 残業代を払わない(タイムカードに記入させない)。
このほかにもいろいろとあこぎな方法があります。基本給はカットしていないから、合法だろう、というのです。
けれども、じつはこれ、大まちがいです。各種の手当だって労働条件に準じるものであり、会社が独断で変更することは許されません。
この労働条件を定めているのが、就業規則です。就業規則は、勤務条件や服務規程などをこまかく定めたもので、社内の法律というとわかりやすい。10人以上の社員を擁する会社には、就業規則を作成し、労働基準監督署に届ける義務があります。
就業規則にかならず記載しなければならないのは、次の3つ。
- 労働時間・休日・休暇にまつわること。
- 賃金にまつわること。
- 退職にまつわること。
労働基準法の第90条はこんなふうに書かれています。
労働基準法第90条(作成の手続)
(1)使用者は、就業規則の作成又は変更について、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者の意見を聴かなければならない。
(2)使用者は、前条の規定により届出をなすについて、前項の意見を記した書面を添付しなければならない。
というわけで、あなたの給料や手当をカットするには、あなたの同意が必要、とあいなるわけです。同意しないとクビだ、なんて高飛車にこられたら、弁護士に相談しましょう。
裁判になれば、会社側が勝つ見込みはまずありません。社会的な信頼の失墜もともないます。クビの撤回や勤務条件改善、さらに和解金が手に入る可能性も高いです。
蛇足ながら、わたしの知り合いの会社(社員300人程度の中堅メーカー)のワンマン社長は、就業規則を見せてほしい、といった社員を、生意気だ、クビだ、と解雇し、訴訟を起こされて、500万円の慰謝料を支払っていました。
すでに給料カットに同意してしまった、という場合でも、泣き寝入りは無用です。就業規則に違反する場合は無効となります。労働基準法が味方になってくれます。奪われたぶんのおカネはとりもどせます。退職金やボーナスについても同様です。就業規則が基準です。
なお、あなたの会社の就業規則にある勤務条件が、労働基準法が定める最低基準を下回っている場合、優先されるのは労働基準法の条件です。
以下のサイトで、労働基準法の最低基準がわかります。ご参考までに。