国民的SFテレビシリーズといえば、米国では『スタートレック』、日本ならもちろん『ウルトラマン』ですね。なかでも、ぼくの記憶に鮮明に残っているのが、1967年10月放送開始の『ウルトラセブン』第37話「悪魔の住む花」です。
物語は、お花畑で花を香をかいだ少女が口から血を流して意識を失うところから幕開けます。驚いたことにこの少女、なんと当時15歳の松坂慶子さんなのです。しかも、彼女はその後、宇宙細菌に寄生されてしまい、吸血鬼と化していくのです。
永遠の淑女、松坂慶子のあられもない○○が丸見え!?
残念ながら、永遠の “淑女” が牙をむき、人を襲う、といったスプラッタな展開はありませんが、それでも、地球防衛軍の基地に収容された松坂慶子さんが、口からエクトプラズムのようなものを吐き散らし、よたよた逃げまどう様は一見の値打ちがあります。
とくに、鼻の穴にカメラがズームインしていき、鼻の穴が画面いっぱいに大写ししになる場面は、みごたえ満点、というか衝撃的です。
さて、本題はここから。モロボシ・ダンが決意するのです。ミクロ化し、松坂慶子嬢の体内宇宙へ潜入することを。
そうなのです。この『ウルトラセブン』第37話のモチーフは、あの『ミクロの決死圏』。このことは、ウルトラセブンが探検する人体内部のセットをみると、確信へと変わります。ダウナー系の幻覚のような『ミクロの決死検』の世界観が完璧なまでに再現されており、怪獣が壁にへばりつくクライマックスもまた、同作ラストシーンの血腫のイメージそのものなのです。
子ども向けの特撮にもかかわらず、このこだわりっぷりは、じつにあっぱれなのです。当時、『ウルトラマン』の二番煎じと揶揄された『ウルトラセブン』ですが、21世紀に入り、シリーズ最高作との誉れ高いのは、こうした大人心をくすぐる演出のおかげなのでしょうね。
侵略にあらがう国産ヒーローの姿に、戦後の日本人の気質をみる
『月光仮面』からウルトラマン、仮面ライダー、戦隊モノまでにいたるまで、専守防衛思想を連綿と受けついできた日本のSF特撮モノ。共通するのは、外からの侵略に巻き込まれてばかりのヒーロー像です。
かたや、冒頭にちらっと書いた『スタートレック』などは、主人公らが用もないのに宇宙船で出かけてゆき、ほかの星に内政干渉をしまくるのであります。そういえば、『アバター』でSF界にエポックを切り拓いたジェームズ・キャメロンが、2000年に製作したテレビドラマ『ダーク・エンジェルⅡ』は、そういう米国にあって、めずらしく巻き込まれ型のプロットを採用していましたが、米国民からまったく支持を得られず、打ち切りになっていました。
SF特撮モノ――こんなところにも、お国柄がにじむものなのです。
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