労働・社会保険に関する法令に基づき、アドバイスや指導、書類の作成などをおこなうのが社会保険労務士(以下、社労士)です。労働に関するトラブルや、保険の受給への不安を抱えたとき、労働基準法をはじめとする労働・雇用・保険関連の法律を駆使して、的確な助言を与えてくれます。
そうはいっても、あまりなじみのない社労士。どんなケースで活用できるのかをまとめてみたいと思います。
もくじ
社労士のテリトリー
現在、全国に約3万人いる社労士の職務内容は大きく次の2つに分けられます。
企業の手続き代行や書類作成、アドバイス
専従の人事・労務担当者を抱える余裕のない中小企業にとって、労働保険・社会保険等の手続きの代行から、就業規則の作成・指導、人事・賃金制度や人材教育訓練に関する相談までをおこなってくれる社労士は不可欠な存在。大手企業へも各種の労働法の改正に際し助言や指導をおこなうことで、リスク回避を手助けすることは少なくありません。最近は、メンタルヘルスについてカウンセラーを紹介するケースも出てきているようです。
個人の雇用問題に関する相談やアドバイス
解雇やセクハラなどの雇用問題、賃金トラブル、有給休暇、年金の受給に関する仕組みや手続きの相談などが主となります。
たとえば、転職したいが、次の当てがない。こんな時、「どう辞めるか?」について社労士に相談するのも一手。企業を退職する場合、会社都合なら手続後7日で失業給付の受給が可能だが、自己都合による退職の場合、3カ月と7日の待期期間があるうえ、給付額はおおむね半分になるなど、「辞め方」によって、法律上の扱いがまったく違うものになるからです。
この際、ポイントになるのは、「退職願いを出すのか、解雇扱いにしてもらうのか」あるいは「退職証明書は書いてもらうべきなのか」など。また失業給付、健康保険、さらには年金がどうなるのかも大切なポイント。社労士はこのすべてを知悉しているから、一人の社労士に相談を持ちかければ、各ケースのメリット、デメリットを一発で把握でき、自分の状況を俯瞰して決断をくだすことができるはずです。
また、先述のように、日ごろから社労士は企業側の雇用問題と向き合っています。トラブルを起こさないための知恵も豊富にもっているのです。むろん、トラブルになり、訴訟となれば弁護士に依頼することになるが、訴訟の前に解決できればそれに越したことはないわけです。
弁護士の司法試験に労働法の科目がないことをさておいても、わたしたちの身近な労働・雇用問題により精通しているのは、間違いなく弁護士でなく社労士なのです。
社労士に聞いた、最近の傾向
都内で社労士事務所を開業しているS氏によれば、「対個人の場合はこれまで厚生年金の相談があるくらいだったが、最近では解雇や賃金未払いなど労働基準法に関する相談が急増している」といいます。
目先の転職以外でも社労士の力を借りることはできます。たとえば、現在は会社員だが将来的に独立開業を考えている場合、退職の方法はどうするのか、その後の保険は継続するのか国民健康保険へ加入するのか、あるいは年金はどうなるのかなどは気になる問題です。社労士と事前にシミューレーションをおこなうことで、キャリアプランは具体性を帯びたものになります。
社労士110番か総合労働相談所なら無料で相談可
社労士への報酬は1時間1万円程度ですが、無料で相談を受けつけているサービスがあります。「社労士110番」は祝・祭日を除く毎週水曜日の午前10時から午後4時まで、電話相談可能。「総合労働相談所」は平日の午前10時から午後4時まで、電話予約の後、東京都社会保険労務士会館へ行けば、無料相談が受けられます。