サイエンスフィクションにはじめて超微細技術が登場したのはスタージョンが1941年に発表した「極小世界の神」でした。
この後、さまざまな作家がこのテクノロジーを題材に選んでいますが、映像化された作品の代表格といえば、やはりSFファン御用達の『デューン/砂の惑星』です。
映画化に何度も失敗した原作をリンチが映像化
1965年に発表されたフランク・ハーバートの大ベストセラー「デューン」シリーズの映画版。何度も映画化が試みられ、そのたび失敗。ついに映画化は不可能とまでいわれたのですが、『エレファント・マン』から4年ぶりにメガホンをとったデヴィッド・リンチがこの未踏峰をみごとに踏破したのでした。
ところが思わぬ落とし穴。映画はビジネスです。外部からの圧力に編集が思い通りにならず、へそを曲げたリンチは、監督名義をアラン・スミシーという偽名にしたのです。
という、いわくつきの作品ではありますが、ふたを開けてみれば、リンチならではのシュールレアリズムな映像表現がすみずみに染みわたり、どこをどう切りとってもリンチ印の金太郎飴。にんまりさせられます。
デューンとスターウォーズの相似点
さて、『デューン/砂の惑星』は壮大なスペースオペラです。時の皇帝シャダム4世の陰謀により、公爵である父親を殺害されたポール・アトレイデス。霊薬スパイスが眠り、巨大な砂虫がうごめく砂の惑星アラキス(デューン)で、彼は覚醒を遂げ、復讐を決意します。
全編を彩るのは荒廃した砂漠のロケーションとぶっ飛んだキャラクター、そして人の精神のメタファーとして登場する巨大な砂虫たち。
この砂虫が『風の谷のナウシカ』のオウムのモデルであることは有名ですが、「デューン」(原作)の影響を受けた作品はほかにも数知れずあります。とくに『スター・ウォーズ』には、砂の惑星(タトゥーイン)やフォース(本作の超能力ヴォイスに通じる)が登場し、デューンの血統を強く感じます。
- 宇宙を舞台にした叙事詩
- 人の精神エネルギーをメーンテーマにしている
- 救世主伝説を描いている
こうした点において、『デューン/砂の惑星』『スター・ウォーズ』は、本妻の子と妾の子、というような見方もできるかもしれません。
文学、ジャズ、絵画などあらゆる芸術にはマスターピースと呼ばれる普遍的傑作があります。ロック史において、日なたのそれがビートルズ、日陰のそれがドアーズなら、『スター・ウォーズ』はSF映画史におけるビートルズ、本作はドアーズでしょう。
ドアーズの名の由来となった、ハクスリーのメスカリン(幻覚剤)体験記『知覚の扉』。砂虫のエキスを飲み干し覚醒を遂げるカイル・マクラクランの姿がそこに重なってみえるのはあながち偶然でもない気がします。
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