小説家やジャーナリストに学ぶ、文章の書き方

執筆

文章を書くとき、ぼくがいつも気をつけていることです。

こういうことに気を配るだけで、無分別に書き散らすより、ずっと締まった文章になるはずです。

泳いだり、自転車に乗ったりするのと同じで、からだが覚えていることですから、あらためて説明するとなると難しいのですが、やってみたいと思います。

文脈で語る

いたずらに難解な言葉やいいまわしを使った文章をたまに見かけます。ああいうのは、「オレはこんなに難しいことを知ってるぞ」という、ひけらかしか独りよがり以外のなにものでもない、と思います。

出版の世界に足を踏み入れたばかりのころ、勤め先の出版社の社長から、何度も厳しくいわれたことがあります。

「高卒(の方)でもわかるように書け」

スティーブン・キングも「平明、簡素を心がけるという鉄則を忘れてはならない」といっています。言葉を知らない、とか、表現力がない、という理由で、文章が書けないという方がいますが、これはおおまちがいです。文章を書くうえでもっとも大切なのは “文脈” です。文脈さえしっかりしていれば、語彙力や技巧に頼らなくても、読み手を納得させられます。

テーマは、言葉で直截に語るのではなく、文脈で語れ、ということです。

どういうことかといいますと、たとえば古今東西、家族の絆をテーマした映画は掃いて捨てるほどありますが、登場人物が一度でも「やっばり家族って大事だね」と話すのを聞いたことがあるか、ということです。よほどの三文映画でもないかぎり、ありえません。そんなことをしたら、観客は興ざめ、作品は台無しです。

どんな映画も、100分前後という上映時間を費やして、作品全体で家族の絆を語っています。そうやって文脈で語ることで、観客の心のひだ深くまでテーマが染みこんでいくのです。映画だけでなく、小説や戯曲、書籍や雑誌の記事にいたるまで、あらゆる創作物に通底する大原則です。

起承転結をつねに意識する

この文脈を組み立てる際に必要なのが、“起承転結” です。

文章全体はもちろん、それぞれのパラグラフ(段落)を書く際、あるいはWebサイト全体の構成を考える際も起承転結を意識すると、話の本筋を見失わずにすみます。多少脱線しても、迷わず本線に戻ってくることができます。

縛られる必要はありません。起承転結の文章構造がいつも正解とはかぎりません。書きだすまえに文脈をイメージし、書いている最中も文脈を意識しつづける、ということが大切なのです。起承転結でなく、起承転々結でもOKですし、序破急でもOKです。

伝わる文章を書くコツ

文脈を念頭に置きつつ、実際の執筆に際しては、次のようなことに心を砕きます。

言葉をとことん刈りこむ

一つひとつのセンテンス(文)が長くなりすぎないようにします。

短いセンテンスを積み重ねて、明白に語るよう心がけます。だらだらと冗漫につづるより、そのほうがずっと伝わります。砂漠に染みこむ水のように、いいたいことを読者の頭へ浸透させることができます。

書き慣れていないと、できあがったばかりの文章は無駄な言葉の洪水のような状態になります。こんなときは、執筆に使ったのと同じくらいの時間を推敲に割きます。意味が通らなくなるぎりぎりのところまで、言葉を削ってみるといいと思います。

ピンとこない、という方は、形容詞と副詞を一度、極限までとりさってみることをおすすめします。Webサイトは文字量の制限がありませんから、くだくだ長文になりがちです。書きあげたら、半分まで減らす、と決めて、推敲してみてください。そのほうがずっとよくなることを実感できると思います。

少しまえの文章――。

「短いセンテンスを積み重ねて、明白に語るよう心がけています。だらだら冗漫につづるより、そのほうがずっと伝わります。砂漠に染みこむ水のように、いいたいことを読者の頭へ浸透させることができます」

刈りこむと、

「短いセンテンスを積み重ねて語ります。そのほうが伝わります」

こちらのほうがいいですね。

文章を削る方法については、ジャーナリストの立花隆さんの『「知」のソフトウェア』(講談社現代新書)がとても参考になります。政治や医学、テクノロジーなど、幅広い分野で活躍する立花さんの仕事術が披露されていて、読んでいると血湧き肉躍る興奮が味わえます。

独りよがりにならない

プロとアマチュアの一番のちがいは、独りよがりでない文章を書けるか否か、ということに尽きます。

どうしてプロが独りよがりでない文章を書けるかといえば、そのための能力を身につけているからです。自分の文章を客観的に読む能力です。簡単に聞こえますが、習得するのはなかなか難しいものです。自分の文章を読むとき、人はわかりにくい部分を無意識に補足したり、都合のいいように解釈したりして読んでしまうものだからです。

雑誌や書籍の編集現場では、編集者と校正者、それに書き手自身が原稿を、文字校、色校など数回にわたってチェックします。誤字脱字や文法的誤り、無駄な表現、意味のとおらない部分などを修正するのが目的です。そこまでしないと、文章から完全に独りよがりを排除するのが難しいのです。

自分の文章を客観的な眼でチェックする、お手軽な方法があります。

  1. ひと晩~数日寝かせる。
  2. 印刷する。
  3. 他人に読んでもらう。

他人の文章を盗まない

剽窃(文章を盗むこと)は犯罪です。見つかれば、訴えられ、賠償請求されます。

最近は検索エンジンも進化を遂げていて、高確率で剽窃を見破ります。ちょっとリライトしたくらいではダメなようです。剽窃が判明すると、検索順位がさげられるどころか、検索結果に一切表示されない、という厳しいペナルティが待っています。

事実、ぼくはあるサイトに投稿した記事を、別のサイトに流用したことがあるのですが、すぐにみつかり、記事は検索圏外へ吹っ飛びました。むろん、そのままコピー&ペーストをするはずはありません。類義語や別の表現に注意深く換言していきました。

それでも、ダメでした。

厳密にいうと、どちらも自分で書いた文章ですから、剽窃にはあたりません。が、いまのところ検索エンジンはそういう気遣いをしてくれません。

Webならではの装飾をほどこす

Webサイトやブログの文章は基本、情報提供を目的としています。訪問者はなんらかの疑問に対する回答を求めていることが多いですから、記事はたいてい飛ばし読みされます。

伝えたい内容をきちんと伝えるために、

太字で強調。
アンダーラインを引く。
朱文字にする。
黄色のラインマーカー。

といった、文字装飾を使うのも有効です。文字を大きくして目立たせているのをたまに見かけますが、あれは読みづらい。やめたほうがいいと思います。

SEOに必要な文字量について

SEO、つまり検索エンジン対策を考えるなら、1ページに必要な文字量は1000字以上、などいう説があるようですが、ナンセンスです。普通に書けば、1000字2000字はあっという間ですし、400字ですむところを無理に1000字にする必要もないと思います。

かさまし目的の無駄な記述は最悪です。検索エンジンに色目を使って、そういうことをしているサイトをときどき目にしますが、いったいだれが読むのでしょうか。

読まれなければ、クリックもされませんし、なにも売れません。

文章を書くときの注意点

今回は、大づかみの話をしました。こまかいテクニックやルールはこちらにまとめましたので、あわせてお読みください。

関連記事「文章を書く際の注意点」

 

あとがき

「難しいことはわかりやすく、わかりやすいことは面白く、面白いことは深く」

ブルーハーツの真島昌利さんが昔、音楽誌『rockin’on』のインタビューでいっていました。

元ネタはおそらく、

「むずかしいことをやさしく、やさしいことをふかく、ふかいことをおもしろく」

井上ひさしさんの座右の銘です。こうつづきます。

「おもしろいことをまじめに、まじめなことをゆかいに、ゆかいなことはあくまでもゆかいに」

なによりの文章作法だと思いませんか?

photo credit: mbgrigby via photopin cc

6 COMMENTS

やまぐっち

こんばんわです。

相手に伝わる文章、読んでもらう文章を書くのは難しいですね。
言葉をとことん刈りこむ事を中心に実践してみようと思います。

今回の記事参考になりました!
また寄らせてもらいますね。

父花

そういっていただけると、とてもうれしいです^^
コメント、ありがとうございます。

ぼっくん

はじめまして、ぼっくんと申します。

大変参考になりました。
私は文章を書くことに苦手意識を持っています。
独りよがりの文章だということが自分でも分かります。
少しでも伝わる文章を書けるようになりたいです。

文脈で語る、言葉をとことん刈りこむ

少しづつでも身に付けられるよう注意していきます。

また、おじゃまさせていただきます。

父花

コメント、ありがとうございました。
とてもはげみになります☺

のぶ

こんにちは!
文章を書くときというのは、本当に気を付けないといけないことがありますよね(^^)
それが体に染みつかれているとはさすがです♪

起承転結←僕は一番ここに気を使って書いています。
最低限のブレはなくなっていい記事がかけるようになりますね(^^)

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また遊びに来ます!

父花

めっそうもない。まだまだ未熟者で、理想にはほど遠いです。
コメント、どうもありがとうございました ^^

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