テレビ番組がやらせ? それがどうした?

ガチンコ勝負が人気だった、フジテレビ系の人気番組『ほこたて』で、やらせが発覚しました。

あらましはこうです。

10月20日放送の同番組の2時間スペシャル「スナイパー軍団対ラジコン軍団」でやらせがあったとして、出演者が告発。告発したのは、ラジコン軍団のひとりとして出演した、ラジコンメーカー勤務の広坂正美さんで、放送終了後の23日、自社サイト内で「偽造された編集内容が余りにも酷かった」とし、ラジコン愛好家へのお詫び文のかたちで、不満をぶちまけました。

これをきっかけに、ネットでは続々と『ほこたて』のやらせに関する証言が飛びだしています。

  • 「絶対に穴の開かない金属対どんな金属にも穴を開けられるドリル」では、直前に番組側の都合で対決の条件が変えられたとか。
  • 「ハッカー対決」では、出演したハッカーがディレクターから事前にパスワードを聞き出していたとか。ハッカー自身がツイッターで告白。

『ほこたて』は、愚直なガチンコ勝負によって視聴者の心をわしづかみにしてきた番組です。

やらせが発覚したことで、ネットではただいま、お祭り騒ぎがはじまっています。

テレビとやらせは切っても切れない関係

そんなに騒ぐほどのことでしょうか。

テレビとやらせは昔から切っても切れない縁で結ばれています。

テレビにおける最も古い捏造のケースとしては、いまも世界中の人々の口にのぼる、1950年代アメリカのクイズ番組『21』の八百長事件が挙げられますね。

スター回答者の大学教授がじつはディレクターから毎回、答えを聞いていたというもので、センセーショナルな事件として全米をさわがせました。ロバート・レッドフォード監督の作品『クイズ・ショウ』のモチーフになっていることも手伝って、日本でもご存じの方は多いと思います。

一方、わが国でも、1985年にテレビ朝日の『アフタヌーンショー』で、暴走族のリンチシーンが捏造だったと発覚し、番組が打ち切りになったり、1992年にはNHKのドキュメンタリー番組『NHKスペシャル』で数々のやらせが明るみに出て、NHKの信用が地に落ちたことなど、例を挙げると枚挙にいとまがありません。

これ以降も『ためしてガッテン』(NHK、)『教えて!ウルトラ実験隊』(テレビ東京系)、『発掘!あるある大事典』(フジテレビ系)などの捏造疑惑が記憶に新しいです。

最近も、テレビ朝日系の高視聴率番組「痛快!ビッグダディ」に出演するビッグダディこと橋下清志さんが、雑誌『フライデー』で「最初の移住は番組が経費をすべて持つという条件だった」「小豆島への移住は地元住民の反対があったが、これも番組の意向。ギャラが発生している」「(貧乏なのに)パチンコに行っている」などと秘密を暴露。視聴者の反感を買っていましたね。

テレビの歴史はもう、やらせの歴史なのです。

そして発覚するたび、社会問題化するわけだけれど、じつはテレビ業界の辞書に「やらせ」という言葉はありません。関係者はこれを「仕込み」と呼んでいます。

仕込み――この言葉はやらせが日常的なのだと雄弁に語ってくれています。

大切なのは、われわれのメディアリテラシー

やらせ、といえないまでも、事実の誇張や、制作サイドの方針にそぐわない情報の省略、世論誘導などはめずらしくありません。

なにもテレビにかぎった話ではありません。だから、われわれは静かに、思慮深く、ただなりゆきを眺めていればいいのです。それこそが抑止力となるのです。メディアリテラシーとは、そういうことをいうのではないでしょうか。

photo credit: wallyg via photopin cc

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