紀元前460~375年。古代ギリシアの医者。病人についての観察や経験を重視し、当時の医術をひとつにまとめあげた功労者である。
病気の予防には、健康で節度のある生活態度が必要だと説いた。健康への道は節度と調和にある、と。
「健全な魂は健全な肉体に宿る」
というようなことを古代ギリシア時代にすでにいっていたらしい。
当時の人びとは、病気を神の劫罰(ごうばつ)と考えていた。近代医学ができあがるまで、あらゆる病気は超自然的な原因で起こる、という考え方が中心だった。
毎年かならず、ぼくらが口の端にかける「インフルエンザ」ということばも、じつは「星の悪い影響(インフルエンス)のもとにある」という意味。昔の人が、多くの命を奪っていく季節性の流感を、星のめぐりあわせが原因と思っていたことのなごりなのだ。
現代でもそういう人は少なくない。そういう人たちは、捧げ物をするなどして超自然的な方法で病気を治そうと考えたりしている。
ところが古代ギリシア時代に、ヒポクラテスだけは、病気は生活習慣が原因だと喝破したのだ。じつにクレバー。
ヘロドトスが歴史学の開祖なら、ヒポクラテスは医学の開祖。実際、医学の祖とか医術の父と証されている。
もちろん、彼もまた哲学者だとぼくは思う。