高齢化社会に突入し、病院や福祉施設はどこも慢性の人手不足にあえいでいます。
ここで紹介している医療・福祉系の資格もいまが旬。ニーズがますます高まるなか、取得すれば、好不況に関係なく、職にあぶれる心配をしなくてすむことでしょう。
医療や福祉の現場の花形といえば、医師や看護師ですね。
医師
大学の医学部か医学大学に6年間通い、国家試験に合格したのち、さらに2年以上の臨床経験を積むことで、晴れて医師となれます。受験者数は8500人前後(2012年度)。合格率は90%弱。といっても、もちろん超難関資格。
看護師
ハードな医療現場の舞台裏を支えるお仕事です。受験するには、文部科学大臣指定の大学や養成所などで学ぶ必要がありますが、実務経験のある准看護師にも受験資格が与えられています。「看護師」は国家資格ですが、「准看護師」は都道府県知事免許です。病院勤務だけでなく、社会福祉施設や訪問看護施設などでも需要が高まっています。
どちらも取得には通学が必要です。
どんなに遅くとも、高校の段階で進路を決めておく必要があるでしょう。
もちろん、医療施設や福祉施設で活躍しているスタッフはなにもこの2つの職種だけではありません。現場では、ほかにもさまざまな仕事が必要とされているのです。
福祉業界の即戦力として認められる「ケアマネジャー」
福祉業界での、昨今の人気上昇株は「ケアマネジャー」です。
まずは、こちらの人気ランキングをご覧ください。
医療・福祉系資格の人気ランキング
1位 ケアマネジャー(介護支援専門員)
2位 介護福祉士
3位 看護師
4位 保育士
5位 福祉住環境コーディネーター検定試験
(2012年度の受験者数に基づく)
介護保険施設において、1人以上の「ケアマネジャー」の配置が法律で義務づけられたこともあって、注目が集まっているのです。
受験者数も2012年は14万人を超えています。「要支援」「要介護」の認定を受けた高齢者の方々をどうケアしていくか、こうしたプランの策定が主業務です。今後もわが国の少子高齢化は加速しますから、将来性の高い資格といえるでしょう。
ケアマネジャー(介護支援専門員)
基本的に実務経験がないと受験できません。「介護福祉士」や「社会福祉士」の有資格者は、実務経験5年以上で受験資格が与えられます。合格率は約20%。独学や通信教育でも十分に合格できる難易度です。
まず「介護職員初任者研修」を取得し、実務経験を積もう
介護・福祉業界に骨をうずめる覚悟なら、「ケアマネジャー」を取得したいところですが、受験資格を得るためには実務経験が必要です。
この業界での資格取得プランとして理想的なのは、「介護職員初任者研修」「介護福祉士」「社会福祉士」「ケアマネジャー」を順番に受験していくというものです。
介護職員初任者研修
2013年にはじまった資格制度です。以前の「ホームヘルパー2級」が生まれ変わったもので、介護職員を目指すなら、まっ先に受講するといいです。研修と名がつくだけに、職務内容や介護、医療との連携、老化や認知症、障害などに関する講義と演習がメイン。最後に1時間程度の筆記試験があります。
介護福祉士
社会福祉施設の介護職員や、訪問介護事業所の訪問介護員として働きたいなら、取得しておきたい国家資格です。寝たきりの方の介護と指導が職務となります。資格がなくても仕事には就けますが、介護職員や訪問介護員を名乗ることはできません。指定養成校を卒業するか、国家試験を受験すれば取得が可能。後者の場合、受験資格として3年の実務経験が必要ですが、通信制大学で学び、受験資格を得る、という手もあります。合格率は60%以上。
社会福祉士
身体や精神に障害を抱えている方々などの福祉相談に応じ、適切なアドバイスや指導をおこなったり、福祉関係者とのあいだに入って、連絡や調整業務をおこなったりするのが、「社会福祉士」の仕事です。こちらも、資格なしでも仕事はできますが、資格がなければ「社会福祉士」を名乗ることはできません。名称独占資格です。合格率20%弱の難関資格です。
なお、まだ業界に飛び込んでいない、という方には「福祉住環境コーディネーター」の2級をおすすめします。先の受験者数ランキングでは5位でしたね。福祉という職業について、幅広い知識が身につきます。
福祉住環境コーディネーター
医療や福祉、建築に関する広い知識を習得できる公的資格です。お年寄りや障害者の方々に自宅改修プランを提示したりするなど、住環境のアドバイスをおこなうのが仕事です。福祉用品や介護用品などの紹介もできますから、建築業界や福祉・介護用品メーカーなどでも重宝されています。
就職率100%の医療系資格! 理学療法士と作業療法士
過去に病気やケガで中長期の入院を経験したことのある方なら、リハビリのお世話になったこともあると思います。院内では「リハビリさん」などと呼ばれていたかと思いますが、あのリハビリの先生たちを「理学療法士」といいます。リハビリが必要な患者さんに、マッサージや歩行訓練、電気療法や温熱療法などをおこなって、社会復帰のお手伝いをするという専門職ですね。
最近は病気や事故だけでなく、加齢からリハビリを必要とするケースも増えており、どこの医療施設でも引く手あまたとなっているようです。事実、理学療法士の就職率はほぼ100%だそうですから、食いっぱぐれる心配のない、堅実な資格です。
理学療法士
超高齢化社会の訪れとともに、急激にニーズが高まっている国家資格です。入院で弱った筋肉や、病気やケガの後遺症をリハビリで治療するのが仕事。専門職ですので、非常勤でもわりと高い収入が見込めますし、医師や看護師との連係プレーで、患者さんの社会復帰をみとどけるのは大きなやりがいにもなります。ただし、取得には指定養成校で3年以上勉強する必要があります。合格率は90%程度。
「理学療法士」とならんで、医療現場で求められているのが「作業療法士」です。こちらも院内では「リハビリさん」や「リハビリの先生」などと呼ばれていまして、ぼくも入院したことがあるのですが、「理学療法士」とのちがいがイマイチよくわかりませんでした。
そこで質問してみました。その答えによれば、「理学療法士」はからだ全体――とくに筋肉の機能回復を目的にしているのに対し、「作業療法士」のターゲットは「手」だそうです。陶芸や園芸、手芸、絵画などの手作業を通して、指先のこまかい動きを回復させ、社会復帰をうながすことを目標にしているそうです。
ただし、ぼくを担当してくれた「作業療法士」の先生は、筋肉マッサージが中心でしたから、現場での明確な棲み分けはないのかもしれません。いずれにせよ、こちらも就職率はほぼ100%を誇っています。受験者は「理学療法士」の半数程度で、医療現場では慢性の人手不足にあえいでいます。
作業療法士
手作業や文化活動を通じて、障害者の社会的応力や、患者の社会復帰をうながすのが職責です。理学療法士は病院や身体障害者施設が勤務先となりますが、こちらは病院のほか、障害者施設やロンガム菌高齢者施設でも求められています。取得には、指定の養成校で3年以上勉強する必要があります。合格率は80%弱。
ここまで紹介してきた資格は、肉体的な側面から患者や障害者を支えるためのものです。
次は、精神的な側面から、現代人の心を支える仕事に就くための資格を紹介しましょう。
心のケアをおこなうカウンセラーになるには?
現代のニッポンはストレス社会です。異常なクレーム社会です。そんな時代に求められているのが、カウンセラーです。
カウンセラーは、ヒトの心の問題を、カウンセリングによって解決していくお仕事です。昨今、職場でのぎすぎすした人間関係やパワハラ、セクハラに悩む方は増えています。また、多発する異常犯罪や事故などに巻き込まれ、心的外傷後ストレス障害を負った人も少なくありません。
臨床心理学の知識や技術を駆使して、こうした人たちの相談に応じることができるカウンセラーになるには、「臨床心理士」や「カウンセラー」といった資格を取得するのが早道です。
臨床心理士
心の専門家を認定する国家資格です。サイコセラピストや心理相談員とも呼ばれる臨床心理士になるのに必要な資格です。病院の心療内科や児童相談所、心身障害者施設などに勤務できます。受験者数は3000人弱で、合格率60%前後。指定大学院修了などの受験資格がありますから、だれでも狙える資格ではありません。
カウンセラー
「臨床心理士」とちがって、だれでも受けられる資格試験です。20科目近い講座を受講したのち、実際にカウンセリングをおこなって、その際に録音した音声を提出し、認定審査を受けるという流れ。ちなみに「カウンセラー」と「臨床心理士」のちがいについてですか、カウンセリングは「臨床心理士」がおこなう心理療法の一分野。「臨床心理士」のほうがより高度な知識や訓練を保有しているといえますが、資格取得の困難さと社会的評価が釣り合っていないのが実情。キャリアだけを考えるなら、「カウンセラー」のほうがコストメリットが高いといえます。
まだある! 医療現場で活躍できる資格
これまで紹介してきたもののほかにも、医療や福祉の現場で求められている資格があります。
まとめて紹介していきます。
救急救命士
事故現場や救急車の車内などで、瀕死の傷病者の応急処置をおこなうために必要な国家資格です。医療現場の最前線を死守する番人ですね。一瞬の判断が、病人やけが人の生死を分けるシビアな仕事ですが、そのぶんやりがいもひとしおです。高校卒業後に養成学校などの指定施設で2年以上修学するなどの受験資格が設定されています。基本的に救急隊員向けの資格です。
はり師、きゅう師
針治療や、お灸による温熱療法をおこなうための国家資格です。取得し、開業すれば、一生食べていけます。最近は東洋医学をとりいれる高級エステサロンも増えており、就職口も広がっています。受験には、養成施設で3年以上修行する必要があります。合格率は80%前後。「はり師」と「きゅう師」を両方とも受験し、まとめて取得する方が多いですね。
あん摩マッサージ指圧師
あん摩やマッサージ、指圧などで、全身のこりをほぐす仕事に必要な国家資格です。「はり師」「きゅう師」と同様、受験前に養成施設で学問を修める必要がありますが、養成学校にはこれら3つをまとめて学ぶカリキュラムがあるので、全部まとめて資格をゲットすることが可能です。「はり師」「きゅう師」にくわえ、「あん摩マッサージ指圧師」の資格もあれば、開業がさらに有利になります。
歯科衛生士
歯科医院において、歯みがき指導のほか、歯垢や歯石の除去、薬の塗布などをおこなうための国家資格です。合格率90%以上と取得は簡単ですが、歯科衛生士学校や養成所を卒業していないと受験できません。OLとして働きながら、あるいは主婦業のかたわら、アルバイトで勤務することも可能ですし、普通のパートより時給は高いですから、取得しておいて損はありませんね。
看護助手実務能力認定試験
看護師になるには養成学校でみっちり学ぶ必要があるのですが、看護助手としてなら学校に通わなくても、医療現場で働けます。資格は必須条件ではありませんが、取得しておけば、医療現場に必要な基礎知識が学べるし、就職の際も有利に働くでしょう。慢性的な看護師不足が叫ばれる昨今、ニーズは高いです。看護師の右腕となって、患者さんたちのお世話をしてみたい、という慈愛の心に満ちた方に向いています。なお、看護助手を目指すなら、「介護職員初任者研修」の資格を取得する、というのも利口な選択肢です。
医療事務
医療機関で、厚労省が定める診療報酬にもとづき 患者さんが支払う医療費を計算したり、明細書を作成したりするのが仕事です。受けつけ業務やカルテの整理などもおこないます。診療報酬請求業務のプロを認定する「医療保険士」や「医療事務技能審査試験」などの資格を取得しておけば、就職が有利になったり、待遇がよくなったりするといわれています。医療事務は、正社員から派遣社員、パートまで、勤務形態が選べるのも魅力です。なお、「就職が有利になる」なんて書きましたが、資格が必要な仕事ではありませんから、採用は経験重視&人物重視です。未経験でも、コミュニケーション能力が高ければ、十分に採用される可能性がありますので、じつは資格なんて別にいりません。ただ、自己PRが苦手だという方は、あると頼れるかもしれませんね。
解説記事。
医療や福祉の現場で働くためには、基本的に資格が必要です。
希望の職に就くための資格を取得したあとも、現場で経験を積みつつ、必要な資格がみつかれば、こつこつと勉強し、資格試験に合格して、組織内評価を高めていくといいでしょう。
photo credit: Pictures by Ann via photopin cc
ほかの資格もチェック!