人間普遍の法。時間も空間も超越する。
永久不変性の思想は古く古代ギリシアにはじまる。その根っこにあるのは、古代では地球上に存在するあまねくものの本質、中世では神の意志、近代においては人間の理性だと考えられていた。
実定法の対義語で、実定法が社会のあり方によって相対的に成立するのに対し、自然法は絶対不変の正当性を主張している。
ただし、自然法は社会の枠組みとは無関係にあるものだから、実定法にとりこまれないかぎりは強制力をもたない、という寛容性をもっている。
ホッブズやロック、ルソー、カントらを代表とする近代自然法の思想は社会契約説へとつながり、ヨーロッパの市民革命の成立になくてもならないものとなった。
19世紀になると、市民性理性が成分法化(法を明文化すること)されて、自然法は衰退するが、20世紀に入るとふたたび注目を集めることとなる。