昨今、SNSやLINEといったコミュニケーションツールが世の中をにぎわせています。それにともなって、ストーカーのバリエーションも広がってきています。
「ネットストーカー」と呼ばれる、こうした顔の見えない加害者の多くは、はなから相手を心理的に追い詰めることを目的にしていることが多く、現実社会の人間関係がストーカー行為へと発展していくケースとひとからげにして語ることはできません。
この記事は、現実社会で起こりやすい、恋愛感情のもつれがきっかけで起こるストーキングの心理について説明しています。
ストーカーの特徴
この手のストーカーの多くに共通する特徴は、
- ストーキングをする動機が心に芽生え、自分が正しいと信じこむ。
- 相手に迷惑がかかっていると知りつつ、相手から好かれたい気持ちが抑えきれない。
- それが無理だとわかると、愛情が憎しみに変わる。
- 相手を傷つけたり殺してしまったり、自殺したりすることがある。
彼らは、この1から4の階段を順番に駆けあがっていくのです。
してみると、ストーカー行為がはじまるとき、そこにはかならずなんらかの動機がある、ということになります。
実際、加害者の話を真摯に聞いてみれば、それぞれかならず言い分があるのです。加害者の頭はその動機に支配され、やがては行動の抑制が利かなくなって、ストーキングにおよぶのです。
ほんの些細な、当人以外にはどうでもいいようなことであることも少なくありません。
- 自分をいつもバカにして、見下しているように感じた。
- デート資金はいつも自分が出していたのにふられた。
- あのとき京都へ旅行に行く約束をしたのに果たされていない。
こんな具合ですから、加害者はなにが相手の神経をそれほど逆撫でしたのか見当もつかず、頭を抱えることが少なくないわけです。が、じつはそこにこそ解決の糸口がある、ともいえるのです。
相手を殺害までしてしまう加害者には、強烈な被害者意識があることが多い、と多くの専門家が指摘しています。被害者に侮辱され、面目を潰されたり、煮え湯を飲まされたりすることで、復讐を決意するのです。
一方で、被害者に加害者意識があることもじつは少なくない。相手を傷つけた覚えはある。けれども自分の正当性を守るため他言はしない。こうしたケースが少なからずあるといいます。
「ストーカー事件では、当事者たちの加害者意識と被害者意識があいまい」
こんなことがよくささやかれますが、その理由はここにあるのです。
ストーカーを根本的に解決するには?
ですから、ストーカー行為を根っこからばっさり断とうというならば、手はじめに加害者の心に芽生えた動機をみつけることが肝要です。
ですが、ひょっとすると加害者自身、その動機がトラウマと化していて、心のその部分に蓋をしているかもしれません。それをいっしょに探してあげることができれば、本当の解決がやってきます。
もっとも、それを当事者同士でやるのは不可能です。専門家の手助けが不可欠です。
これは、ストーカーやDVなどハラスメント問題をとりあつかうNPO法人「ヒューマニティ」の理事長を務める心理カウンセラー、小早川明子さんの言葉です。
このサイトではストーカー対策をさまざまご紹介していますが、そのほとんどは加害者のケアには目を向けていません。もしあなたに、みずからの平穏な生活だけでなく、相手の幸せをも求める余裕があるのなら、ストーカー専門のカウンセラーに相談してみるのも一手です。
参考文献
この記事を書くに際して、小早川明子さんの著書『「ストーカー」は何を考えているか』(新潮社)を拝読させていただきました。
小早川さんは、被害者だけでなく、500人以上もの加害者に直接会って、通常は一方的に断罪されている彼らの声にも耳を傾けておられます。そういう経験から紡ぎだされる言葉にはいちいち説得力があります。
多くの実例をひき、そこから得た知見が満載。ぜひ、ご一読ください。