大人が感動する絵本として知られています。1977年の初版からすでに100刷りくらい。100刷りというのは、100回増刷したということです。超ロングセラーです。すごいです。絵本のマスターピースです。
絵本にしては長めの、しっかりした物語。全31ページもありますから、まずはストーリーラインをさらりとなぞっていきましょう。
あらすじ
100万回も死に、100万回も生きたトラ猫がいた。
100万人の人間がその猫の飼い主となったのだけれど、どんなに愛情をそそがれても、トラ猫が彼らに愛情をかえすことはなかった。
あるとき、トラ猫はノラネコとして生を受けた。飼い主のいない自由の身だ。気ままに暮らしていたある日、トラ猫はきれいな白猫と出会い、恋に落ちる。そして子どもをもうけた。
やがて、子どもたちは独立し、トラ猫も白猫も年老いていく。いつまでもいっしょに生きていたいと願うトラ猫であったが、ある朝目覚めると、白猫は冷たくなっていた。
トラ猫は100万回も泣き、いつしか白猫を追うようにして動かなくなっていた。もう、トラ猫が生き返ることはなかった。
深いお話ですね。子どもと大人では印象ががらりと変わることでしょう。
子どもが全体象をつかむのはちょっと難しいかもしれません。しかし、なにかしら感じ入るところはあるようです。娘に読み聞かせたら、「トラ猫、死んじゃってもう生まれ変われないなんて、かわいそー」とかいっていたので、「生まれ変わらないから、大好きな白猫といっしょに天国で暮らせるんだぞ」というと、「あ、そっかー」と微笑んでいました。
大人が読めば、哲学や宗教的な思索をくみとることもできます。
生にも死にも意味なんかないし、死ぬのも怖くない――こんな虚無感にとらわれたニヒリストのオス猫が、メス猫と恋に落ち、6匹の子どもを育てるなかで、自分の実存を確立していくわけですね。100万回目の人世で、彼はついに自分の存在の意味を知り、人生に価値を見いだしたのです。
そうして、愛する妻を亡くしたことで、彼の魂は深い悲しみのうちに昇華され、永遠の輪廻から開放される――。
なにいってるの、全然ちがうわよ、と著者は笑うかもしれませんけれど(笑)。まあ、自分でおカネを出して買った本をどんな解釈で読もうが、読者の勝手ですものねー。
『100万回生きたねこ』作・絵/佐野洋子
このとらねこ一代記が、何を風刺しているかなどと考えなくても、すごいバイタリティーをもって生き、かつ死んだ話をおもしろいと思ってみればよいと思う。上級から大人まで開いてみて、それぞれに受けとめられるふしぎなストーリーでもある。飼い主へのつながりが無視され、前半と後半が途切れているようで、みていくとつながってくるふしぎな構成である。(日本経済新聞「こどもの本」書評より)
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