天才スズキコージの真骨頂です。無言でずんずん歩くきゅうりがいきなり登場。熊やトナカイ、犬猫、牛、山羊といった動物たちがあわててうしろから、
ヒマワリ
と口をそろえてひきとめます。けれども、勇敢なのか無謀なのかはしりませんが、このきゅうりは周囲の制止に耳を貸さず、ひたすら前進あるのみ。動物たちは手持ちの防具や武器をきゅうりに貸し与えていきます。
ページをめくるたび、どんどんきゅりうさんの装備が強力になっていきます。
最終的に歩く殺鼠兵器と化しているのがなんともユカイツーカイ。親子で吹きだしてしまいました。
あ、「歩く」と書きましたが、走っています。最後はローラースケートを履いています(笑)。
シュールです。不条理です。
娘が2歳のころから繰り返し読んでやっています。もう、あっちこっち破れています。ただ、同じセリフの繰り返しですから、4歳を過ぎると物足りなくなった様子。
同じ著者の絵本では、物語性のある『おばけドライブ』などを好むようになりました。
『きゅうりさんあぶないよ』を卒業したら『おばけドライブ』
『おばけドライブ』、ぼくはスズキコージさんの作品で一番好きです。
主人公のヘイザくんが、たばこ屋の宝くじでスポーツカーを当て、ガールフレンドのカアコさんとカッパ池までドライブに出発するンですが、途中でおばけたちが乗り込んできて……。ストーリーはこんな感じ。
とにかく絵の持つパワーがものすごいです。押しつぶされそうになります。
おばけに入道、鬼、河童と子どもたちが喜びそうな記号満載なンですが、ちょっと不気味すぎるため、娘もぼくも最初は生理的に受けつけませんでした。ところが、2度3度と読むうち、いつしか物語の世界観に魅了されていきました。
きっと、作者が愛情をたっぷりそそいで描いているからでしょうね。
絵本は絶版です。古本屋でしか手に入りません。残念です。わが家には『おばけドライブ』のDVD(サウンドつきの動く絵本)もあります。こっちも廃盤ですが、スズキコージさんがナレーションを担当。味わい深くて迫力満点。ヒジョーに貴重です。
『きゅうりさん あぶないよ』作・絵/スズキコージ
「きゅうりさん、そっちへ行ったらあぶないよ、ねずみが出るから」 くまさんが帽子をくれました。しかさんは手袋を、いぬさんはほうきを。次々にいろんなものをもらって進むきゅうりさん。ねずみに出会う頃には…。(「MARC」データベースより)
きゅうりさんが歩いていくと、動物たちが口々に「きゅうりさん そっちへいったら あぶないよ ねずみがでるから」という不思議な文句をいって、それぞれ、何かをわたしていきます。クマは帽子、トナカイは角と手袋、ハリネズミは針、ネコはリュックサック、ウシはサモワール、イヌは箒、ニワトリはローラースケート靴と旗、カラスは眼鏡、ヤギはひげといった具合に。すると、きゅうりさんは、その度にすこし姿が変わりますが、でも委細かまわず進んでいって、どんどん変身してしまうのです。 最後にきゅうりさんは、最初のきゅうりさんとは似ても似つかないものになってしまいました——すると、ネズミが! この絵本が、〈年少版こどものとも〉で出されると、子どもたちは「きゅうりさん」の言葉を言い換えて、「ソーセージさん そっちへいったら あぶないよ ねずみがでるから」と、遊びはじめたそうです。ある園では、秋の運動会でゲームになりました。
(Amazon商品説明より)
まだまだあるぞ! おすすめ絵本