思わず手が赤くなるほど拍手しちゃったのは、絵本『どこ? つきよの ばんの さがしもの』をはじめて読んだとき。いるんですねー、こういう細かい芸当をさらりとやってのける人が。
作者の山形明美さんは静岡出身の造形作家。幼児雑誌で人形製作なんかを手掛けておられるそうです。
いちおう「絵本」と銘打たれているのだけれど、正確にいうと「絵本」でなくて「写真集」。どのページも絵筆で描いた絵ではなくて、精緻をきわめるジオラマ写真がドーン! と見開きで載っている。
扉の向こうの異世界、迷路状の庭園、水中に沈んだオシャレなキッチン、古くて立派な洋館……。
主人公の「ぼく」が飼い猫の「クロ」を追い、こんなさまざまな場所へと次々に迷い込んでいくというのが筋。
どのジオラマも非常に完成度が高くて、『ナイトメア・ビフォア・クリスマス』や『羊のショーン』の世界に迷い込んだような錯覚を覚えるものもあります。
ページをめくるたび目の前に、非日常の世界をビビッドに切り取ったひとこまひとこまがバーン! と広がっているのです。
添えられている文章は、そのページにあるものを羅列するだけのシンプルさ。「ぼく」も「クロ」も案内人に徹していて、余計な活躍をしないから、ぼくらは探しものに没頭することができる。
娘とおでこをくっつけて探しっこ。先に見つけたときの快感といったらもう! 娘のくやしそうな顔といったらもう(笑) あまり負けが込むと涙目になるので、ころあいを見て勝たせています。全部みつけたら、自分でストーリーをつくるのも楽しい。道具立ては完璧です。
この手の「探し絵本」シリーズとしては、「ウォーリーをさがせ!」「ミッケ!」なども有名ですが、ぼくはこの「どこ?」が一番好きだなあ。
なんでだろー。やっぱり情熱かしら。作者の山形さんのことを最初に「細かい芸をさらりとやってのける人」と書いたけれど、これは正しくない。
一番面のジオラマをつくるのに2か月かかることもあるそうですからね。1冊1年以上かかる。世間では、これを「さらり」とはいいません。
いやーお見事。
『どこ? つきよの ばんの さがしもの』作/山形明美 写真/大畑俊夫
まんげつの よる、クロを おって はじまった、ふしぎな さがしものの たび。クロは どこ? さがしものは、ほかにも、たくさん。さあ、さがして、みつけて、おいかけて! ここに あるのは、ぼくが もちかえった、ふしぎな おみやげ。どの ページから もって きた ものか、わかるかな。どこ?(Amazon商品ページより)
まんげつのよる、ねこのクロをおってはじまった、さがしもののたび。ふしぎなたびのおわりには、よるのせかいからのおみやげが…。ぜんぶ、みつけられる。(「BOOK」データベースより)
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