ユーキャンなどの通信教育大手では、「医療事務」と「調剤薬局事務」の資格講座が大人気。1位と2位を独占しています。
ただし、このブログのメイン読者層は、男性会社員の方々。どちらの資格も、女性の受験者が圧倒的に多いため、これまで放置してきました。
ところが、先日から女性読者の方から立て続けにメールを頂戴しておりまして、女性読者も相当数おられると判明しましたもので、「医療事務」ならびに「調剤薬局事務」について、人気の理由や試験内容、勉強方法、取得メリット、活かし方などをまとめておきたいと思います。
もくじ
経験者優遇+人物重視の採用試験、資格はその切り札に
医療事務はひとことでいうと、医療現場の会計係。健康保険の診療報酬などに精通している、医療会計のプロ、という位置づけですね。
高収入でも好待遇でもありませんが、高齢化社会を迎え、人材不足が叫ばれる医療現場において、確実な需要のある堅実な仕事ですから、希望者も少なくないのです。
そんな医療事務の採用で重視されるのは、なんといっても経験者です。それと、人物重視の傾向も強い。
「医療事務に資格? そんなの関係ないよ」
そう一笑に付す、医療施設や福祉施設関係者も少なくありません。
じつは、医療現場で資格保有者として認められるのは、医師(歯科の場合は、歯科医師)や看護師(同、歯科衛生士)を筆頭に、薬剤師や診療放射線技師(レントゲン技師)、理学療法士、作業療法士など、国家資格を持つ方たちだけなのです。
こうした仕事には、資格がないと就けません。そんな資格を「業務独占資格」と呼ぶのですが、医療事務資格はこの業務独占資格ではありませんから、資格なんてなくたってだれでも働くことができるのです。
資格スクールなどは、よく「資格がないと就職できないよ」と不安をあおって、医療事務資格の取得をすすめますけれど、本当は資格がなくても、就職・転職は可能なのです。まったくの未経験でも、小さなクリニックなら、条件さえ譲歩すれば雇ってくれるところもあります。
でも、資格スクールのいっていることも、まったくのウソではありません。経験がないうえに、人間力にもあんまり自信がないなあ、という方が、医療事務の採用枠に応募する場合、やはり資格を持っているにこしたことはないのです。
その理由は次のとおりです。
- 勉強の課程で、医療事務の仕事の内容や、医療に関する基礎知識が身につくから、志望動機が具体的にイメージできるようになる。
- それを履歴書に書いたり、面接で話したりすることができる。
- その結果、面接の際の、心のよりどころになる。つまり、不安が解消する。
- 晴れて就職が決まり、働きだしてからも、仕事になじむのが早い。
結婚や出産などでいったん離職し、その後に再就職やパートを希望する際なども、資格があれば、より条件のいいところで雇ってもらえるケースは少なくないようです。
3か月ほどみっちりと勉強すれば、たいてい合格できる資格ですから、これからはじめて医療事務の仕事に就こう、と考えている方は、お守り代わりに取得するといいでしょう。努力したぶんのメリットは享受できます。
医療事務資格は約30種もある
じつは医療事務の資格はたくさんあります。
ざっとこんな感じ。
- 「医療事務技能審査試験」
- 「医療秘書情報実務能力検定試験」
- 「医療情報実務能力検定試験」
- 「ケアクラーク技能認定試験」
- 「医療保険士」
- 「認定医師秘書TM」
- 「医療事務管理士技能認定試験」
- 「診療報酬請求事務能力認定試験」
- 「診療報酬請求事務能力認定試験」
- 「介護保険事務管理士」
- 「医療事務実務能力認定試験」
- 「介護事務管理士技能認定試験」
- 「調剤報酬請求事務技能認定」
- 「診療情報管理技能認定試験」
- 「福祉事務管理技能検定試験」
- 「ホスピタルコンシェルジュ検定試験」
- 「医療事務OA実務能力認定試験」
きりがないので、このあたりでやめますが、全部で30種類くらいあるそうです。
ぼくもはじめて知ったときは舌を巻きました。
――取得希望者が迷うではないか。どうしてこんなに必要なのか?
理由は明快です。
医療事務資格は大人気資格のひとつで、受験者が多いため、資格認定団体からすると儲かる畑なのです。だから、参入者が多く、激戦区と化しているのです。
資格の世界にも、市場原理が働いているわけです。
そんなわけで、資格選びは目移り必至なのですが、なかでも病院関係者のなかでは知名度が高く、しかも短期間で取得しやすい資格を紹介しておきますね。
応募要項はこちらをチェックしてみてください。
ほかに、もっと難しい医療事務資格もあります。
が、先ほども書いたとおり、医療現場が求めているのは資格ではありません。経験とやる気ですから、そんなものを取ったところでなんの役にも立ちません。
そうそう、上記資格を両方とも取得する必要なんかないですよ。どちらかひとつでOKです。
ちなみに、歯科への就職を希望する場合もこの2つで大丈夫です。受験時に「医科」と「歯科」が選べますから、「歯科」を選択すればOKです。
なお、薬局限定で就職・転職活動をするつもりなら、医療事務資格ではなく、調剤薬局事務の資格が必要です。
まずは無料資料を取り寄せて、じっくり目を通す
医療事務資格にチャレンジするぞ、と決心したあなたも、まだちょっと迷っている、というあなたも、まずは通信講座の資料を取り寄せましょう。
講座を申し込む必要なんてありません。でも、これらの資料には、医療事務資格の概要や、勉強時間の目安、ペース配分の仕方、試験の対策と傾向などが簡潔にまとめられていますから、とても参考になります。
資格を取得した先輩たちは、1冊の参考書より講座案内のほうがずっとタメになった、と口をそろえていいます。資料が届けば、やる気もがぜん湧いてきます。
資格の取得学習をスタートしたのち、勉強につまずいたり、挫折しそうになったりしたときもこうした資料を読みかえすことで、モチベーションがキープできる、というメリットがあります。
資格のかしこい取り方――取得への最短ルート
医療事務資格に合格するための勉強時間の目安は、200~300時間といわれています。毎日2~3時間を3か月つづける、といったところでしょうか。
会計の資格ですから、難しい計算式を覚えたり、駆使したりする必要があるのでは? と思われる方が多いようですが、これは思いこみ。単なる先入観です。
実際の試験では、カルテを見ながら、レセプト(患者への請求書で、「診療報酬明細書」ともいう)に点数を記入するだけです。しかも、試験中に診療報酬点数表や資料を見てもOKなので、計算式や数字の丸暗記は無用です。
ひらたくいえば、点数表の見方や明細書への記入方法をからだに叩きこんで、もたもたせずおこなえるようになれば、合格できます。練習問題をたくさんこなすことで、だれでもこのスキルは身につきます。
参考までに「医療事務技能審査試験」の試験内容をちょっと紹介しますね。
- 実技Ⅰ/患者接遇
- 患者対応や院内コミュニケーションに関する筆記試験で、50分で2問が出題されます。たとえば「診察券を忘れたのですが、診察は受けられますか?」といった問い合わせにどの回答するかを400字以内で回答します。正しい敬語で受け答えができるかも問われます。
- 学科/医療事務一般知識
- 60分で択一式25問が出題されます。試験範囲は「医療保険制度」「高齢者医療制度」「公費負担医療制度」「介護保険制度」「医事法規一般」「医事業務」の6つ。これらにくわえて、「診療報酬請求業務」「医学一般」「薬学一般」「診療録」の4つから、任意のテーマをひとつ、自分で選択します。
- 実技Ⅱ/診療報酬請求業務
- レセプト業務の実技試験です。レセプトの点検をおこないます。つまり、解答用紙のレセプトがカルテ内容と相違ないかどうかをチェックするだけ。参考資料の持ちこみが許可されています。重要な箇所には付箋を貼り、アンダーラインを引いて臨みましょう。
就職・転職についてのアドバイス
最初に書いたとおり、医療事務資格はお守りだという意識を忘れないようにしましょう。医療や福祉の現場では医療事務資格を資格だとは考えていませんから、過分にアピールしたりすると笑われます。
面接官に資格のことを聞かれたら、
「資格を取ることにしたのは、医療現場や医療事務のお仕事のことを、事前に少しでも知っておきたかったからです。それと、やる気も少しはアピールできるかな、と。こんな資格を取ったからといって、仕事にそのまま活かせるとは考えていません。まったくの未経験ですから、いろいろご面倒をおかけすることと思います。でも、労を惜しまず、一生懸命に仕事を覚えるつもりです。先輩方にもいろいろとご指導ご鞭撻いただきたいです」
などと答えておいて、「あの、ひとつだけおうかがいしてもいいですか?」と前置きし、
「こちらの先輩方、おやさしいでしょうか?」
そういって、目の前の相手ににこりとほほえみかけましょう。
あなたがうら若き女性で、相手がおじさんだったりすると、もうイチコロです。そうでなくても、及第点がもらえる受け答えではあります。資格もうまく使えば、人間力をアピールする武器になります。
それともうひとつ、就職・転職活動を有利に進める秘策があります。
PCスキルを認定してくれる事務系資格をゲットしておくのです。
面接官は医療事務資格は履歴書でよく目にしますが、PCスキルの資格はめずらしい。マイクロソフトが「Microsoft Office」製品の利用スキルを認定する「MOS試験」などは、ふだんから普通にパソコンを使っている方なら、簡単に取得できますし、世間での評価も高いです。
医療事務資格と合わせて保持すれば、鬼に金棒です。
※ずいぶん長くなりましたので、調剤薬局事務については別の記事にまとめたいと思います。
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