『100万回生きたねこ』が100刷りなら、1963年発表の『ぐりとぐら』はなんと約200刷りを数えます。200回増刷されたのです。もはや定番中の定番。一家に一冊の正露丸的絵本です。
というわけで、みーんな大好き『ぐりとぐら』。子どものころ、2匹のねずみが腕によりをかけてつくった巨大カステラによだれを垂らしたママも少なくないはず。ぼくもそのクチ。
昔、家族で『ぐりとぐら』をめぐって、論争が勃発しました。あの大きな卵はだれが産んだのか、というのが、そのときの論点。
ぼくは「こんなに大きいから、きっとダチョウの卵だよ」と一生懸命に主張したのですが、父は、「ぐりとぐらは野ネズミとある。野ネズミというのはアカネズミのことで、日本固有の動物で、ダチョウはアフリカやアラビアの生きものだから、棲息域が全然ちがうのだよ」などと、絵本の世界に大人の常識を持ちこむという、子ども相手に絶対にしてはならない反論を展開し、おさない息子の意見を退けました。
けれどいま、よくよく絵本を見てみると、なんということでしょう、イノシシなど日本の野生動物に混じって、ライオンやゾウやワニやフラミンゴの姿があるではありませんか!!
してみると、ここは動物たちのユートピア。だとすれば、野ネズミとダチョウが共存しているのも、ライオンがエサが目の前にわんさかいるのにおとなしくカステラの焼けるのを待っているのも全部、腑に落ちます。
さあここで、あらためて幼少期の問いに答えをみつけようと思います。
ぐりとぐらの卵、サイズからするとやはりダチョウの卵である確率がかなり高いように思われます。
ダチョウの卵は直径17cm。重さ1.5kgもあるそうです。ニワトリの卵の30倍くらいの重さ。
アカネズミであるぐりとぐらの身長を図鑑で調べてみると、えー、頭からつま先まで10cm~12cm程度らしい。ほーら、ドンピシャリ。
ちなみに、ダチョウの殻は厚さが2ミリもあって、人が乗っても割れないそうです。ぐりとぐらは卵が割れることをたいそう不安がっていましたが、とりこし苦労だったわけですね。
なーんてことを考えるようになった時点で、もはやぼく自身、あの当時の父と同じ穴のムジナ(-_-)
カムバック、ピュアハート。
ああ、イヤだ、大人になるって……。
『ぐりとぐら』作・中川李枝子 絵・大村百合子
1963年に「こどものとも」誌上で発表されて以来、日本だけでなく世界各国で愛され続けるふたごの野ネズミ「ぐり」と「ぐら」のお話。
ぼくらの なまえは ぐりと ぐら
このよで いちばん すきなのは
おりょうりすること たべること
ぐり ぐら ぐり ぐら歌いながら森へでかけたぐりとぐら。大きなたまごを発見し「あさから ばんまで たべても、まだ のこるぐらいの おおきい かすてら」を焼くことにした。甘いにおいにつられて、森の動物たちが次々と集まってくる。「けちじゃないよ ぐりとぐら ごちそうするから まっていて」。さあ、できあがり。おなべのふたをとると、ふんわり黄色いかすてらが顔を出す。
たまごが大きすぎて運べないなら、この場で作ろう。たまごのカラが残ったら、自動車を作って乗って帰ろう。次々と楽しいことを思いつき、軽やかに実行してみせるふたり。「(ぐりとぐらに)苦手なものはあるの?」という読者からの質問に、著者の中川李枝子は「失敗しても、間違っていても平気。やりなおせばいいもの」(『ぼくらのなまえはぐりとぐら 絵本「ぐりとぐら」のすべて』より)と答えている。ぐりとぐらの、この大らかな性格が、読み手の気持ちをやわらかくほぐしてくれる。
そして、誰もが夢中になるのはなんといってもあの「かすてら」。どれだけ時がたっても、甘い、幸せな記憶としてほかほかと胸に残る。
「ぐりとぐら」は、本書以降シリーズ化されており、クリスマスや海水浴など、いろいろな場面でのふたりの活躍を見ることができる。(Amazon商品紹介ページより)
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